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気持ちのかたち6
図書室どころか、学校全体の気配が静かになったように感じた。
咲は自分の心音が、少しだけ早くなっているのが分かった。
ゆっくりと、バッグの中に手を伸ばして、ラッピングをそっと取り出した。
咲は小さく、深呼吸する。
斜め向かいにいる悠は、精いっぱい手を伸ばしても届かない距離にいた。
だから、椅子を引いて、立ち上がった。
その音で、本を読んでいた悠が顔を上げた。
視線が交差する。
悠の席までの距離は、わずか数歩。
さっきまではその距離が、どうしようもなく遠かった。
でももう、動くと決めた。
咲はゆっくりと向かい、悠の横の椅子を引いて腰を下ろした。
悠のほうに体を向けて、まっすぐに目を見た。
「……あの、日向くん」
消え入りそうな声で、だけどはっきりと、名前を呼んだ。
「……うん」
悠は本を閉じ、しっかりと咲の視線を受け止める。
咲の唇がわずかに震える。
一瞬ラッピングに視線を向けると、またすぐに悠へと視線を戻した。
「……バレンタインだから。
これ、受け取ってほしいなって、思って」
今朝から守ってきたラッピングの袋を、そっと悠に差し出した。
リボンの結び目が、かすかに揺れた。




