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優しい灯  作者: 豆大豆
1章
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ふれる声

秋が授業で紹介していた詩集を探しに、咲は図書室に来ていた。

図書室の空気は、朝方の雨の名残をまだ少しだけまとっていた。

窓際に並ぶ書架に、くぐもった光が差し込んでいる。


咲は、詩集の棚の前に立っていた。

あの時紹介された本がどこか心に残っていて、読んでみたくなった。

指先で背表紙をたどっていたとき、すぐ近くに誰かの気配があった。


ふと視線を上げると、そこにいたのは日向くんだった。

ほんの少し手前にいた彼は、咲と同じ列を見ていたようだったが、

悠は目が合うより先に気付いた。

「あ」

かすかに声を上げ、すっと半歩引いて、場所をあけてくれた。

わずかに笑ったその表情には、気まずさではなく、やさしさがあった。


「もしかして藤音さんが探してたの、それ?」

悠が指で、棚の一角をそっと示した。

そこに、あの詩集があった。

咲は小さく頷いて、棚からそっと手に取った。

悠がさっと避けた動作がやわらかくて、少し胸があたたかくなった。


「それ、秋先生が授業で言ってたやつだよね?」


「うん、なんか……気になってて」


「……うん、わかる」


それだけ言って、悠は図書室の奥の方へと歩いていった。


咲はしばらく、その背中を見送っていた。


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