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優しい灯  作者: 豆大豆
1章
46/145

周りの視線2

放課後、少し開いた窓から冬の風が容赦なく吹き入れ、廊下は冷えていた。

少しだけ息が白くなるのを感じながら、咲は図書室へと向かう。


いつもの窓際の席に座り、借りた本を読む。

まだ悠は来ていない。


そのとき、ふと声をかけられた。

「藤音さん。日向さんは、今日は来ないのですか?彼が予約していた本が届いたのですが……」


落ち着いた、やさしい声。秋がいつの間にか向かいに立っていた。


咲は思わず、一度だけまばたきをした。


「え……あ。いえ、たぶん、情報の課題をやるって言ってたので、今はパソコン室にいると思います。

なので、終わったら来るんじゃないかと……」


戸惑いを隠すように答えながら、

“たぶん”という言葉に、自分でも気づかないうちに、妙な確信が混ざっていた。

悠がこの場所に来る未来を、自分の中で当然のように思っていた。


秋は、咲の返事に軽く頷いた。


「ありがとうございます。そうですか。では、そのうち来ますね」


そう言って、秋はカウンターへと戻っていった。

深く追うことも、詮索することもなく。


咲は、手元の本へ視線を戻す。

だけど、数行読むごとに、頭の中には秋の言葉がふっと蘇ってしまう。


『藤音さん。日向さんは──』


(……私に聞くってことは……やっぱり、私と日向くん、"ふたりでワンセット"って思われてるんだ)


その事実に、気づきながら気づかないふりをした。




そして、

図書室のドアが、静かに開く音。


咲は、顔を上げない。でもわかってしまう。

優しくドアを閉める音。

静かな足音。


咲は顔を上げて確認した。

いつものように、悠が来ていた。


そのタイミングで、カウンターの奥にいた秋が、悠に声をかけた。

「日向さん、予約していた本、届きましたよ。借りていきますか?」


「あ、借ります、ありがとうございます」

そういって、悠は、カウンターに向かって秋から本を受け取った後、

ごく自然にいつもの席、咲の斜め向かいの席に向かう。

悠はちらりと咲を見てから、静かに椅子を引いて、腰を下ろした。


咲はそっと話しかける。

「……日向くん」


「ん?」


「今日は少し遅かったね。情報の課題やってたの?」

念のため、確認してみた。


「あー、うん。パソコン苦手でさ。放課後まで時間かかっちゃったんだよね」

その言葉は、咲が誰よりも彼の近くにいたことの証明だった。

(……やっぱり……)

その事実に、思わず咲は顔が熱くなった気がして、ページの影にそっと顔を隠した。


「そ、そっか……お疲れさま」


「……?うん、ありがとう」


本の隙間からそっと視線をのぞかせると、

悠は少し不思議そうな顔でこちらを見ていたが、すぐに借りたばかりの本に視線を落としていた。


咲は小さく息を吸って、

また手元の本へ視線を戻した。


文字に目を滑らせる。

文字を追ってはいるけれど、内容はほとんど頭に入っていなかった。

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