周りの視線1
昼休み。
悠は、自席でパンをかじっていた。
前の席に座る男子と他愛もない話をして、時々笑いながら。
そこへ……
「ねえ、日向くん」
不意に声をかけられた。
声の主は、咲と同じグループでよく一緒にお弁当を食べている女子だ。
「咲ちゃん、どこ行ったか知らない? 教室いないんだけど」
悠はパンの袋を片手に、きょとんとした顔をする。
口に含んだパンを牛乳で流し込み、一息ついてから、
「……いや、知らんけど」
「うそー、絶対知ってるでしょ。最近いつも一緒じゃん」
「いや、“いつも一緒”ってわけじゃ……」
パンを持つ手を止めたまま、目線を泳がせる。
「……あ、でも」
ひと呼吸置いて、つぶやくように続けた。
「……たぶん、図書室。藤音さんが好きなシリーズの新刊が入る予定だから、見に行ってるかも。
弁当食べてないなら、もうすぐ帰ってくると思う」
「……おぉ……やっぱ知ってるんじゃん……」
思わず感心したように声を漏らす。
悠は気まずそうに視線を逸らし、残りのパンに集中しようとする。
「いや、別に、知ってるって言うか、たまたまっていうか……」
「はいはい、“たまたま”ね~」
からかうように笑いながら、去っていった。
それを聞いて悠は少しだけうなだれた。
口をもぐもぐ動かしながら、ぼそっとつぶやいた。
「……なんで俺に聞くんだよ、ほんとに」
「……俺も藤音さんを探すなら、悠に聞くわ、多分」
悠と一緒にご飯を食べている目の前の男子にも言われた。
その時、咲が教室に戻ってきた。
……悠が言っていた新刊を手に携えて。
いつも咲とご飯を食べている女子グループから、わあっと声が上がる。
「咲ちゃんおかえり~。図書室行ってたの?日向くんの言う通りかあ」
咲は、少し不思議そうな顔をしながら「日向くん…?」とつぶやいていた。
「…な?」
目の前の男子がその様子を見て、ニヤリと笑う。
(…くそ、どんな状況だ、これ…)
悠はなんとなく恥ずかしくて、顔が赤くなっているのを感じた。
でも、むずむずするけど、嫌な気分は無かった。




