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優しい灯  作者: 豆大豆
1章
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日常のまなざし3

冬の陽が落ちるころ、下校のチャイムが鳴った。

図書室からはもう、人の気配がほとんどなくなっていた。


悠は本を閉じ、それを静かにリュックにしまう。

咲も本にしおりを挟みこみ、カバンにしまった。


会話は無いまま、椅子を同時に引く音が響いた。


カウンターでは、司書教諭の秋が、貸し出し・返却用のノートパソコンを操作し、

大量の返却本を一冊ずつ処理していた。


ふたりがカウンター近くを横切ると、秋はわずかに顔を上げ、

「お疲れさまでした。ふたりとも、気を付けて帰ってくださいね」

と声をかけてきた。


それを聞いた咲は微笑みながら「ありがとうございます。失礼します」と頭を下げる。

悠も続いて「……失礼します」と声を返した。

秋はそれ以上は何も言わず、静かにふたりを見送った。



咲と悠が靴を履き替えて校舎を出ると、風がひときわ冷たく感じた。

夕焼けはもう沈みきって、空にはかすかに星が瞬きはじめていた。


帰り道の住宅街でも、ふたりの足は並んでいた。


「……寒いね」


白い息を吐きながら、咲がつぶやいた。

ただそれだけなのに、咲の声が、いつもよりもずっと胸の中に響いてくる。


「うん……まさに冬って感じ」


話している時間よりも、黙っている時間が長い、いつもどおりの、ふたりの帰り道。


すでに暗くなった空の下、大通りへ続く細い道。

街灯は、ふたりを優しく照らしていた。

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