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優しい灯  作者: 豆大豆
1章
41/145

新年の攻防

悠は、自分の部屋でスマホを手にしたまま、ソワソワしていた。

年末を知らせる紅白の音だけがリビングから聞こえてくる。



(すぐ送るか……ちょっと待って送るか……やっぱ送らないか……)


スマホの時計を見る。

23:55。

下書き欄には「あけましておめでとう。今年もよろしく。」

シンプルだけど、それ以上の文が思いつかない。


(これ、硬い? そっけない? でも、長すぎても変だし……)


悩んでいるうちに、時計は23:59を表示している。

決めきれずに、スマホを持ったまま深呼吸。


そして、00:00。


その瞬間。


「……えっ」


画面に、通知が表示された。


咲:

「あけましておめでとう。今年も、よろしくね。」


(ま、まじか)


まさかの先手。

しかも、送信時刻はピッタリ午前0時。


悠は一瞬固まり、すぐに返信を打つ。


悠:

「あけましておめでとう! 先に送られるとは……

なんか、ちょっと悔しいかも。」


1分も経たずに、咲からの返信。


咲:

「ふふ。私も、最後まで迷ってたよ。

でも、なんか今年は……自分から言ってみようかなって思った。」


その一文に、悠の胸が妙にざわついた。


(……“なんか今年は”?)


その言葉に、たぶん深い意味はない。

ないと思うけど、想像が膨らんでしまう。

自分がその理由の一部だったらいいのに、と思ってしまう。


悠:

「そっか。……送ってくれて、うれしかったよ。」


と打って、送ったあとに気づく。


(“うれしかったよ”? なに言ってんだ俺……)


もう、返信の間なんて気にしてる余裕もない。

さっきまで冷静に構えていたつもりの自分が、咲によってどんどん崩れていく。



またすぐに、咲から、メッセージが一つ送られてくる。


咲:

「冬休み終わったら、また図書室でね。

風邪ひかないようにね?」


そのあとスタンプが送られてきた。

可愛らしい女の子のキャラクターが、心配そうな顔でこちらを見ている。



そのひとことに、

悠はスマホを見つめたまま、しばらく言葉が出なかった。


(……なんだこれ)


胸の奥が熱い。

でも、心地いい。


悠:

「うん。また図書室で。

そっちこそ、風邪ひかないようにね」


その文を送信してから、スマホを伏せた。


しかし、すぐに通知が鳴る。

終わりだと思っていたから、どうしても心が踊ってしまった。


咲からスタンプが送られていた。

「ありがとう」とお辞儀する柔らかいイラストのネコ。


そして、メッセージ。

咲:

「ありがとう。じゃあ、ゆっくり休んでね。よいお正月を」


悠は、スタンプを一つ。

「ありがとう」と吹き出しの付いた、漫画のキャラクター。


そのスタンプを送信してから、またスマホを伏せた。

今度は通知は鳴らなかった。


鳴らないスマホの静けさに少しだけ物足りなさを感じながら、

枕に顔を埋めて、またひとりで悶えた。

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