冬の残光
<悠の部屋>
イルミネーションを見た日の夜。
悠はベッドに寝転がって、暗い部屋で天井を見つめていた。
部屋は止めたストーブの熱がまだぬるく残って、カーテンの隙間からは冬の澄み切った星空が覗いている。
(……思い出すなって言ってんのに)
今日の出来事が、何度も頭の中をよぎる。
光のアーチ。
手袋越しの手の感触。
咲の声。
咲の笑顔。
「ありがと、日向くん」
(……ああ、もう!)
枕を引き寄せて、顔を半分うずめた。
思い出すたびに身体の芯がくすぐったくなる。
うれしいのか、恥ずかしいのか、それとも全部なのか。自分でもよくわからない。
でも、不思議と嫌じゃない。
たぶん、何年経っても、ずっと忘れない気がする。
きっと、今日のことは、どんな風にでも残っていく。
(……年明け、どうなるんだろう)
ふと、そんなことを考える。
いつも通りの図書室。
咲の席の向かい。
いつも通りにまた居れるのかな。
胸の奥に、ぽつんと何かが灯る。
楽しみのような、不安のような。
でも、次が待ち遠しい。
悠は、顔に当たる枕を押しながら、大きく息を吐いた。
<咲の部屋>
悠がベッドで悶えているころ、
咲は椅子に座って小説を読んでいた。
ほんのりと眠気を感じ、読みかけの小説をそっと閉じる。
その上に、ゆっくりと手袋を並べて置いた。
温かい指先の感触が、まだ残っている気がして、手袋をそっと撫でた。
「……ふふ」
誰にともなく、声が漏れた。
思い返す。
あの灯の下の時間。
ほんの少し、手を重ねたこと。
悠が、あんなに照れていたこと。
恥ずかしかった。
戸惑った。
でも、それ以上に…手を引いてくれたことが、どうしようもなくうれしかった。
いつか、この記憶も色褪せていくのかもしれない。
でも、今はまだ。
手元のカレンダーを見る。
12月の残りわずかな日々と、丸で囲んだ年明けの始業式。
(……また、休み明けに)
その言葉が、ふんわりと胸に残っていた。
咲は明かりを落として、カーテンを閉じる。
今日の灯を、そっと胸の奥にしまいながら。




