表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
優しい灯  作者: 豆大豆
1章
40/145

冬の残光

<悠の部屋>

イルミネーションを見た日の夜。

悠はベッドに寝転がって、暗い部屋で天井を見つめていた。


部屋は止めたストーブの熱がまだぬるく残って、カーテンの隙間からは冬の澄み切った星空が覗いている。


(……思い出すなって言ってんのに)


今日の出来事が、何度も頭の中をよぎる。


光のアーチ。

手袋越しの手の感触。

咲の声。

咲の笑顔。

「ありがと、日向くん」


(……ああ、もう!)


枕を引き寄せて、顔を半分うずめた。


思い出すたびに身体の芯がくすぐったくなる。

うれしいのか、恥ずかしいのか、それとも全部なのか。自分でもよくわからない。


でも、不思議と嫌じゃない。

たぶん、何年経っても、ずっと忘れない気がする。

きっと、今日のことは、どんな風にでも残っていく。


(……年明け、どうなるんだろう)


ふと、そんなことを考える。


いつも通りの図書室。

咲の席の向かい。

いつも通りにまた居れるのかな。


胸の奥に、ぽつんと何かが灯る。

楽しみのような、不安のような。

でも、次が待ち遠しい。


悠は、顔に当たる枕を押しながら、大きく息を吐いた。




<咲の部屋>

悠がベッドで悶えているころ、

咲は椅子に座って小説を読んでいた。

ほんのりと眠気を感じ、読みかけの小説をそっと閉じる。


その上に、ゆっくりと手袋を並べて置いた。

温かい指先の感触が、まだ残っている気がして、手袋をそっと撫でた。


「……ふふ」


誰にともなく、声が漏れた。


思い返す。

あの灯の下の時間。

ほんの少し、手を重ねたこと。

悠が、あんなに照れていたこと。


恥ずかしかった。

戸惑った。

でも、それ以上に…手を引いてくれたことが、どうしようもなくうれしかった。


いつか、この記憶も色褪せていくのかもしれない。

でも、今はまだ。


手元のカレンダーを見る。

12月の残りわずかな日々と、丸で囲んだ年明けの始業式。


(……また、休み明けに)


その言葉が、ふんわりと胸に残っていた。


咲は明かりを落として、カーテンを閉じる。

今日の灯を、そっと胸の奥にしまいながら。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ