冬の光1
夕方、16時半を少し過ぎたころ。
空はすでに淡い群青色に染まりはじめていた。
咲と悠は終業式後の時間を図書室でゆったりと過ごしたあと、
校門を出て並んで歩いていた。
鞄の端がときどき触れるくらいの距離。
それはもう、誰も気に留めないほど自然になっていた。
風が吹いて、咲のマフラーが少しだけなびく。
冬の冷たい空気に、頬がほんのり赤くなっていた。
「ねえ、日向くん。進学希望調査、もう出した?」
咲がふと思い出したように言うと、悠は頷いた。
「一応、進学で出したけど…正直、まだよくわからないかも」
「うん、わかる。私も、とりあえず文学系かなって思って書いたけど」
「藤音さんぽいね」
悠が静かに言うと、咲は軽く笑った。
「それ、褒めてる?」
「もちろん。ちなみに俺は法学部って書いた」
「日向くんぽいね」
「それ、褒めてないっしょ?」
からかうような咲の言葉に悠は思わず笑ってしまった。
穏やかな会話と、ふたりの足音が帰り道に響いていた。
赤信号の前で、ふたりは立ち止まった。
目の前を帰路に向かう車がゆっくりと通り過ぎていく。
ふいに、咲が尋ねてきた。
「そういえば、駅前のイルミネーション、もう見た?」
「いや、今年は見てないや。毎年やってるやつだよね」
「うん。今年は新しいイルミネーションも増えたみたいで、結構綺麗らしいよ。……SNSとかでも、写真あげてる人が多くて」
「へぇ、そうなんだ」
それを聞いた悠は、咲の声の奥にある小さな期待(……思い込みかもしれないけど)を感じた。
少し黙ったあと、何気なく言った。
「……見にいってみる?」
それを聞いた咲はパッと明るい顔をして、
そのあと、少し照れたように笑った。
「うん」
信号機が青の光を灯した。
そしてふたりは、駅前へと続く道を、静かに歩き出した。




