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優しい灯  作者: 豆大豆
1章
34/145

ふたりの帰り道3

冬の空はあっという間に薄暗くなっていて、街のイルミネーションの光はいっそう際立っていた。

本を買ったふたりは、ふたたび帰り道を並んで歩いていた。

本屋から駅までの短い道のり。

でも、さっきよりも、足取りは穏やかだった。




白い息を吐きながら、悠は小さく尋ねた。

「さっきのペンケース、似てたね」


咲はふっと柔らかく微笑んだ。

「うん……日向くん、覚えててくれたんだね」


「え?いやいや。あのペンケースの猫、いつもこっち見てきてたから、なんか記憶に残っててさ」


その言葉に、咲の心はまた温かくなった。

この人は、いつも謙虚なのに、人のことをちゃんと見てくれている。



「まだあのペンケース、使ってるよね」


「うん……なんか、手放せなくて……。中学校に入った時のお祝いに、お母さんが買ってくれたの」


「……そっか。そりゃ大事だよね……。

 そういえばあのペンケースって、猫が描かれてるけど、藤音さんって猫好きなの?」


「うん。好き。家にも2匹いるんだよ」


「2匹も。じゃあ、お世話大変じゃない?」


「ふふ、犬と違って、散歩とかは無いから──」

なんてことない会話が、咲にとって今日はなんだか楽しく、温かく感じた。

それはきっと、悠がペンケースについて、大切な思い出に触れるように優しく聞いてくれたからだと思った。



街に置かれたクリスマスのイルミネーション。

その温かな光が、ふたりを優しく照らしていた。



結局、今日は悠と咲は改札前まで話しながら歩いていた。

いつもよりもずっと会話が続いていた。

悠はバスだが、咲を改札口まで見送ってくれた。


「じゃあ、藤音さん、今日は付き合ってくれてありがとう」


「ううん……日向くんも、ありがとう」

ペンケースを覚えていてくれて。

その言葉は飲み込んだ。言わなくても、もう伝わっていると思った。



咲が人波に紛れて姿が見えなくなったのを見届けて、

悠もバス乗り場へと向かった。


外の風はますます冷たかったが、

咲の優しい笑顔がいつまでも胸に残っていた。

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