ふたりの帰り道3
冬の空はあっという間に薄暗くなっていて、街のイルミネーションの光はいっそう際立っていた。
本を買ったふたりは、ふたたび帰り道を並んで歩いていた。
本屋から駅までの短い道のり。
でも、さっきよりも、足取りは穏やかだった。
白い息を吐きながら、悠は小さく尋ねた。
「さっきのペンケース、似てたね」
咲はふっと柔らかく微笑んだ。
「うん……日向くん、覚えててくれたんだね」
「え?いやいや。あのペンケースの猫、いつもこっち見てきてたから、なんか記憶に残っててさ」
その言葉に、咲の心はまた温かくなった。
この人は、いつも謙虚なのに、人のことをちゃんと見てくれている。
「まだあのペンケース、使ってるよね」
「うん……なんか、手放せなくて……。中学校に入った時のお祝いに、お母さんが買ってくれたの」
「……そっか。そりゃ大事だよね……。
そういえばあのペンケースって、猫が描かれてるけど、藤音さんって猫好きなの?」
「うん。好き。家にも2匹いるんだよ」
「2匹も。じゃあ、お世話大変じゃない?」
「ふふ、犬と違って、散歩とかは無いから──」
なんてことない会話が、咲にとって今日はなんだか楽しく、温かく感じた。
それはきっと、悠がペンケースについて、大切な思い出に触れるように優しく聞いてくれたからだと思った。
街に置かれたクリスマスのイルミネーション。
その温かな光が、ふたりを優しく照らしていた。
結局、今日は悠と咲は改札前まで話しながら歩いていた。
いつもよりもずっと会話が続いていた。
悠はバスだが、咲を改札口まで見送ってくれた。
「じゃあ、藤音さん、今日は付き合ってくれてありがとう」
「ううん……日向くんも、ありがとう」
ペンケースを覚えていてくれて。
その言葉は飲み込んだ。言わなくても、もう伝わっていると思った。
咲が人波に紛れて姿が見えなくなったのを見届けて、
悠もバス乗り場へと向かった。
外の風はますます冷たかったが、
咲の優しい笑顔がいつまでも胸に残っていた。




