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優しい灯  作者: 豆大豆
1章
28/145

文化祭の欠片3

タピオカミルクティーの試作会が終わって、校門を出た帰り道。

空はうっすらと秋色の気配に染まっていて、少し涼しくなった風が頬をなでた。


咲は制服の袖を少し引っ張り、それからバッグを肩に掛けなおした。

隣には、悠の姿があった。


「……なんか急にどっと疲れが出てきた」


先に口を開いたのは悠だった。


「うん。明日、ちゃんと起きられるかな……」


咲が、小さく笑って答える。


「俺、たぶん風呂で寝ると思う。もう目が限界」


「それ、絶対のぼせるよ」


ふたりの笑い声が、帰り道の住宅街に響いていた。


少し歩いたところで、蝉の声が耳に入った。

ヒグラシだった。でも、もう9月。わずかに残った鳴き声が木々の間からかすかに響いていた。

咲は歩みを止め、遠くに沈むオレンジ色の空を見た。

悠も立ち止まり、同じ空を見上げた。


「……なんだか、夏休みの帰り道を思い出すね」


「図書館の?」


「うん。……ヒグラシの声、まだ残ってるんだね」


「たしかに。あのときも、こんな感じだったなあ。鳴き声はもっと多かったけど」


悠は咲のほうに顔を向けて、問いかけた。


「文化祭、大丈夫そう?」


咲は少しだけ考えて、首をかしげた。


「うん。ちゃんと、準備は出来てるし。多分大丈夫。……日向くんも、いろいろありがとう」


咲の声は小さかった。でも、その声は、ちゃんと悠に届いていた。


悠は、前を向いたまま少し笑って、「どういたしまして」とだけ返した。


並んで歩く二人の影が、夕日に伸びていく。


騒がしかった一日は、今ようやく静けさを取り戻していた。

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