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優しい灯  作者: 豆大豆
1章
23/145

夏休みの日常

県立図書館の二階、閲覧席の一角。

窓の外では、木々が陽の光を受けて穏やかに揺れていた。


咲は、国語のワークブックを開いたまま、ため息をついた。

あと三ページ進めたいのに……集中力は途切れていた。


ふと顔を上げると、数席向こうに見慣れた姿があった。


(あれ?)


咲がそう思って視線を向けると、同じタイミングでこちらを向いていた。


悠だった。


驚いた表情のまま、ふたりは数秒視線が交差し、

そして、同時に、ふっと笑ってしまった。

にぎやかにしてはいけない空間で、

同じことを思って同じ反応をしてしまったことが、

なぜかおかしくて、うれしかった。


悠が笑顔で、咲に向かって小さく手を振った。

咲も、小さく返した。

それ以上は、再びノートへと向き直った。



閉館の時刻になり、咲がノートを閉じて帰宅準備を始めると、

悠も帰る準備をしていた。


咲が立ち上がると、悠も席を立つ。

ふたりは自然と合流して、入り口へと向かった。


悠は白い半袖シャツとジーンズの組み合わせという、少しだけラフな格好をしていた。

髪は心なしか伸びかけていて、前髪が少しだけ眉にかかっていた。


対して咲は、部屋着に近いTシャツの上から、くしゅっとした薄手の羽織りを無造作にかけているのと、ゆったりしたロングスカートだけだった。

「どうせ知り合いには会わないだろう」と思って選んだ服がなんとなく気になって、わずかに顔が熱くなった。


そんなことを考えていると、悠が口を開いた。


「藤音さん、宿題しに来てたの?」


「うん。……日向くんも?」


「うん。図書館なら集中できるしね。バイト先にも近いし」


そういう悠に、咲は視線を合わせられなかった。

今日の自分の服が気になっていた。


けれど、悠はなにも言わなかった。

最初は、気を使っているのかもしれない、と思った。


または……


(日向くん、相手の服装を気にしないタイプなのかな)


そんな考えが浮かぶと、今まで気にしていたのがウソみたいに楽になって、小さく笑ってしまった。


その様子をみた悠は、少し不思議そうな顔をしながらも、ポケットから取り出したスマホで時刻を確かめていた。


「じゃあ俺、これから夏祭りのバイトだから、そろそろ行くね。」


「うん。がんばってね」


「ありがとう。藤音さんもね。また宿題しに来るかも。」


そう言って、悠は走っていった。

咲は、離れていく悠の背中を見つめていた。

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