テストの後で
中間テストが終わった日の午後の図書室。
ふたりはテストの前と同じ席に座っていた。
今日ふたりが手にしているのは文庫本だった。
教科書と参考書は、カバンの中で静かに眠っていた。
ふと、悠が本から顔を上げて咲に話しかけた。
「藤音さん。テスト、どうだった?」
咲も本から目を離し、少しだけ考えてから答えた。
「うん。まあまあ、かな。手ごたえは悪くなかったかも……日向くんは?」
「そっか。俺も、たぶん、なんとか」
ふたりは顔を見合わせて、わずかに笑った。
「……なんか、今回は、いつもより勉強がやりやすかったかも」
咲は机の夕陽と影の境目を見ながら、ぽつりと言った。
「……うん、俺も」
それ以上の会話はなかった。
ふたりとも、また読書の時間に戻っていった。
外の光は、いつのまにか傾きはじめていた。
木々の影が図書室の床に静かに揺れていた。
下校のチャイムが鳴るよりも前に、悠は荷物をまとめていた。
「じゃあ、俺は今日は先に帰るね。ちょっと寄りたいところがあって」
立ち上がった悠は咲に声をかけながら、小さく手を振った。
「うん。また明日ね」
咲は小さく手を振り返した。
いそいそと図書室から出て行く悠の背中を、咲は見送った。
空いた斜め向かいの席が、少しだけ物足りなく感じた。




