言葉の風景7
最後のグループが戻ってきたのを確認して、教卓の前に立つ秋が静かに口を開いた。
「皆さん、戻ってきましたね」
少し間を置いて、つづけた。
「日常の風景を文章にするのって、意外と難しかったと思います。
でも、皆さんは書いてくれました。それだけで充分です。
授業はこれで終わりです。お疲れさまでした」
その時、放課後の始まりを告げるチャイムが鳴り響いた。
教室の中では、生徒が帰り支度を始めた。
咲と悠も荷物をまとめて席を立った。
廊下からは、先ほどとは打って変わって放課後のにぎやかさに包まれていた。
咲が荷物が入ったカバンを肩にかけると、
「藤音さん」
教室のざわめきに紛れて、悠が声をかけてきた。
「俺、今から図書室にちょっと寄るけど、藤音さんは?」
言い終えてから、悠はそっと視線を逸らした。
誘ったというより、ただ聞いただけ。そんな空気を装っているように見えた。
咲は間を置かずに、小さくうなずいた。
「……うん。私も、寄ろうかなって思ってた」
それを聞いた悠の表情が、少しほっとしているように見えた。
「そっか。じゃあ、いこう」
並んで廊下を歩く咲と悠の間には、やっぱり言葉は少ない。
だけど、それが居心地の悪いものじゃないことは、もうふたりともわかっていた。




