言葉の風景6
授業の終わりが近づき、ふたりは中庭を離れて再び校舎へと戻った。
咲は提出用紙をはさんだノートを、胸元でそっと持ち直す。
言葉数も少ないまま、静かに歩いた。
その空気が、今の咲にとって一番居心地が良かった。
ふと、廊下から窓の外を見ると、花壇の前に他のグループがいた。
三人の女子が、色とりどりの花の前でしゃがみこんで、ひとりが花をやさしく撫でていた。
それを見ていたふたりの女子は笑顔で何かを話していて、そのあと三人の笑い声が窓の中にも少し届いた。
咲はその笑い声を聞きながら「何を話しているんだろうね」と、小さく口にした。
「なんだろうね。楽しそうだな」と言う悠の顔は、なんだかいつもよりも穏やかに見えた気がした。
教室に近づくにつれて、かすかにざわめきが戻ってくる。
教室に入ると、すでに秋は教卓に居た。
数組の生徒も席についていて、控えめな声で談笑していた。
「戻りました」
そう言って、咲と悠は提出用紙を差し出す。
秋は、ふたりに気づいて軽く目を向け、静かに
「おかえりなさい」
と言って、用紙を受け取った。
咲と悠はそれぞれの席に座った。
ふたりで並んでいた時間が終わっても、
咲の中にはその余韻が小さく残っていた。




