言葉の風景1
午後の光が、窓際の席に座る生徒を照らしていた。
カーテンがゆるやかに揺れ、机の影も静かに揺れていた。
昼休みの空気がまだ残るなか、秋が静かに教室へ入ってきた。
扉を静かに閉めて教卓の前に立つと、手にしていた紙の束を机に置いた。
教室を見渡し、落ち着いた声で口をひらく。
「今日は、外に出ましょう。課題は“敷地内を歩いて、感じたことを文章で書くこと”です」
その言葉に、教室がわずかにざわめいた。
いつもとは違う授業。
教室の外へ出る。それだけで、なんだか心がはずむような期待感が、教室の中を静かに飛び交った。
「校舎の中でも外でも、好きな場所を選んで構いません。
ゆっくり歩いて、普段は気づかないもの、通り過ぎるものに意識を向けてみてください」
"好きな場所"に足を運べる。
その言葉に、教室の空気はさらにざわめきを増した。
「どこ行ってみようかな」
「屋上とかいいのかな」
「外行こうかな」
わずかな高揚感がそこかしこから感じられた。
そんな教室のざわめきを前に、秋は紙の束を配りながら、説明を続けた。
「提出用紙は一人一枚です。うまくまとめられなくてもかまいません。
大切なのは、その場で、“感じた何か”を書くということですから」
配られた用紙を手に、咲もどこに行こうかを考えていた。
旧校舎に行ってみようか、それとも、外のどこかを歩いてみようか。
すぐに答えは出なかったけれど、今の気持ちだけで、すでに何かが書けそうだった。




