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優しい灯  作者: 豆大豆
2章
108/145

優しい灯④

「悠くん!咲ちゃん見てない!?」


そう言って戻ってきた夏海さんは、さしてきた傘を畳んで小屋に入ってきた。

そして、ベンチに座った私を見つけた瞬間、


「あ、咲ちゃん!……ずぶ濡れじゃない」


と言い、自分のカバンから取り出したタオルで私の頭を拭き始めた。


「な、夏海さん、どうしたの?」

突然のことにあっけにとられた私はそう言うしかなかった。


「すごい濡れてるんだもん…このままじゃ風邪ひいちゃうよ。あ、このタオル、私が部活で使ってたやつ。洗ってあるけど、気になったらごめんね」

頭をわしゃわしゃと拭かれて、私はされるがままに頭が左右に揺れる。

そのあと、夏海さんは自分の上着を脱ぎ、濡れた私の服の上からそっと掛けてくれた。

「待って、私の服、ずぶ濡れだから……」

「いいからいいから。少しでも違うでしょ」


濡れた服の上にかけられた、夏海さんの上着。

体を冷えたままだけど、胸の中から温かいもので満たされる感覚があった。


収まったと思った涙が、またあふれてきて、両手で顔をおさえた。


どうしてこんなに優しくしてくれるんだろう。

「どうして…」

つい、言葉になってしまった。

「ふたりとも、そんなに、優しいの……」

それが精いっぱいの言葉だった。


夏海さんが隣に座って、私の背中に手を置く。

それから、笑いながら言った。

「友達だもん」

いつもの明るい笑顔だった。



元から、夏海さんに悪意が無いのは分かり切っていた。

それなのに、私の方から壁を作ってしまった。

夏海さんは今、その壁すら軽々と乗り越えてきた。

そして、私の中に自然に居場所を作って、隣に座っているような、そんな感覚だった。

その強引さに、心から救われるように感じた。


雨は止む気配がなく、むしろますます強まって、数メートル先すら見えないぐらいだった。

それでも、この小屋の中でふたりに囲まれている私は、もうつらくなかった。

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