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優しい灯  作者: 豆大豆
2章
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進んで、戻って

塾の授業が無い日でも、自習室はいつでも使えるのがありがたかった。

同じように努力をしている人がたくさんいて、誰に向けられたわけでもないピリッとした空気が今の私には必要だと思っていた。

分からないところは、待機している講師に聞けるのもありがたかった。

集中出来るし、分かるところは少しずつ増えている手応えも感じることが出来た。


外がすっかり暗くなったころ、私は鞄から四角い箱を取り出す。

箱の中にあるアルミの包装紙を破いて、栄養食のブロックを少し折り、口の中に運ぶ。パサパサがあっという間に水分を盗みだす。

お腹は少しだけ落ち着いて、もう少し頑張ろうという気持ちになった。


ひと段落ついたら荷物をまとめて帰る。それがここしばらくの私の日常だった。



塾に通う時間と比例するように、図書室で過ごした時間が恋しくなる。

最初は日向くんと一緒に過ごして、まだ勉強よりも読書がメインだったっけ。

私が読まないような、少し難しそうな歴史の物語を好んで読んでいたな。でも、私が好きな本にも目を通して、感想を聞かせ合うこともあった。

テストが近いとふたりで慌てて勉強して、そういえばあの頃はこんなに苦労してなかった気がする。


電車で揺られながら参考書のページをめくるけれど、頭の中は最近よりも過去の思い出ばかり。

その景色は、いつもオレンジ色の温かい灯に包まれていた。



家で、寝る前に机に向かう。

過去の範囲の復習をして、終わったら寝ようと決めた。


しかし、解けない。一度理解したはずなのに、また地図をなくしたかのように解き方がわからなくなった。

焦りが出てくる。

わからないままじゃ、何も成長していない。

私は参考書を引っ張り出し、付箋の貼ってある箇所を順番に見ていく。

以前悩んだ記憶がある場所だ。

確かその時もどうにか納得はしたけど、半ば無理やり、という感じだった。

時間をかけてまた理解し直して、次の問題に行く。

そしてまた詰まる。

そもそも復習なんてものは、過去に理解できなかったところを中心にやるのだから、忘れてしまったらまた時間がかかるものだった。

いつの間にか時間は日付を超えていた。


まだ大丈夫…もう少し。


自分がやると決めた範囲を、やり遂げたかった。

だけど、時間は過ぎていく。

前に理解したはずなのに、新たに詰め込んだ知識に押し潰されたのか、なかなか引っ張り出すことができなかった。

焦りと疲れが体を襲う。


時間は夜の2時を超えた。


どうして私はこんなに頭が悪いのだろう。


夏海さんはなぜ、ずっと集中出来るのだろう。羨ましい。

私も同じぐらい頑張ってみよう。

そう思って勉強を続ける。


外からは、新聞配達のバイクの音が聞こえる。

遠くの暗い空に、白いグラデーションが混じり始めていた。

気づいたら4時近くになってしまった。

明日……というか、今日も学校があるから、さすがに少しは寝ないと。

解けなかったところは、明日塾の講師に聞こう…。

自分が決めた範囲をやりきれなかったことに、良いようのないやるせなさを感じる。

そう思いながら布団に入ると、一瞬で意識は落ちていった。

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