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優しい灯  作者: 豆大豆
1章
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プロローグ 静かな始まり

高校2年になって、まだ日が浅い春の午後。


藤音(ふじね) (さき)は、お気に入りの窓際の席に座り、ノートに静かにペンを走らせていた。


図書室の午後は、いつもと変わらず静かだった。

カーテンが、風のかたちを教えていた。

誰かのページをめくる音が遠く聞こえていた。


ふと、入口近くでかすかな物音がした。

それに続いて、小さな声が。


「あっ……」


本が一冊、床に落ちた。

その横に、男子生徒がしゃがみこんでいた。


咲は、彼を知っていた。

同じクラスの日向ひなた) ゆう)。あまり話したことはないけれど、ときどき図書室で見かける人。


彼は急ぐことなく、本をやさしく拾い上げた。

そして、指先でそっとほこりを払った。

その動きは、声のない「ごめんね」みたいだった。


咲は、気づかれないように視線を逸らした。

けれど、心のどこかに、その一瞬が静かに残った。


誰に向けたわけでもない仕草。

でも、それを見た自分の胸に、ふわりとあたたかいものがともった。


それが始まりだった。

名前のない灯のようなものが、咲のなかに、そっと根をおろした。

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