表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/49

34

 若竹姫は腰をかがめて、いつまでも走り出せるように、姿勢を変える。(足に大きな力をためる)

 この白い幽霊の女の子がもし、本物の百目の鬼なのだとしたら、白藤の宮のそばには絶対に近づけるわけにはいかなった。(そう。絶対にだ)

 ……たとえ、その代わりに私の命が犠牲になったとしても構わない。

 若竹姫は(本当に、心から)思う。

 若竹姫はじっと、百目の獣姫の姿を見つめる。

 ……、見てはいけないと言われる鬼。(その恐ろしい鬼の顔をじっと強い目で見つめる)

 その鬼と出会うと、その鬼の妖艶な魅力のある顔に、この世のものとは思えない美しい姿形に魅了されると、そのまま、手を引かれて、あの世に連れて行かれてしまうとされている、怖い、怖い悪霊。鬼。

 ……、でも、実際に会ってみると、その姿形に恐怖は感じない。

 むしろ、安心感のようなものさえ感じる。

 この白い幽霊の女の子について行きたいと(若竹姫は)思う。ずっと一緒にいたいと、そう思わせるような不思議な魅力が、確かにこの鬼にはある。(わかっているのに、頭の中がくらくらする)

 それが一番怖い、この鬼のもっとも恐ろしい力、なのだろうか? (真っ暗な闇の中に引き込まれてしまうような、そんな冷たくて不気味な怖さがある。穴の中に落ちるような。自分のたっている地面がなくなってしまうような。真っ逆さまに落っこちるような。恐ろしさ)

 若竹姫は視線を百目の獣姫に向けたままで、(自分の意識をはっきりとさせるために)心の中で自分の背後でぐっすりと安心して眠りについている、白藤の宮のことを思う。(愛している人のことを思い浮かべる)

 ……、白藤の宮。

 どうか私を守ってください。

 どうか私に、あなたの力を貸してください。

 若竹姫は思う。

 強く、強く、思う。

 それから若竹姫は自分の愛刀である、守り刀でもある、白い刀を思い浮かべる。

 鬼を切るための刀。

 若竹姫の生まれた古い神社に伝わっている山々の神様が鍛えた神刀。(神様の力が宿っている小太刀のような白い持ち手の刀)その美しい白い刀は今、若竹姫のそばにはない。

(……だからこそ、こうして安心して、百目の鬼はくすくすと楽しそうに笑いながら私の前に姿を現したのかもしれない)

「……、若竹。こっちにいらっしゃい」

 と眠っている白藤の宮が、とても幸せそうな声で若竹姫の名前を呼んだ。(きっととても小さな童のころの若竹姫と夢の中で一緒に楽しく遊んでいるのだろう)

 その声を聞いて、(ぴくっと小さな耳を動かして)百目の獣姫が若竹姫の後ろを覗き込むようにして、顔を斜めにして、白藤の宮のことを見ようとした。

 その瞬間、若竹姫は百目の獣姫に向かって、思いっきり、(ためた力を解放するようにして)畳をけって、(思いっきり蹴ったはずなのに音はまったくしなかった)まるで森に住む獣のように、(あるいは、森に吹く風のように)とても素早い動きで走り出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ