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署に戻ると、刑事部には誰もおらず——
署に戻ると、刑事部には誰もおらず、モレッロ警部の机の上にはダレッサンドリ=ピオスコ事件に関する書類が積みあがっていた。タイプされたもの、謄写、メモ、警察写真、取り調べカード。
この書類の山をどうするか考えないといけない。
もう、夜の十一時で、いまごろ妻は——妻は事件が解決して安心していたのに、結局、自分は事件から手を引けなくなった。旅行にでも行こうか。破滅に向かう前に最後の安息を味わうくらい許されるだろう。
少し感情が高ぶって、眠気が襲ってこなかった。警部は書類を分類し、書物庫にしまい、また整理をした。二時間くらいで終わると思ったが、終わったのは朝の五時だった。
警部の席の横の、東側に開いた窓から朝焼けのあかね色が洪水のように流れ出した。壮大な光に圧倒され、オーケストラがきこえるようだった。カタンザッロの家で命を拾ったときもこんな光を浴びたのだ。
そのとき、無音の銃弾が窓ガラスを裂き、警部の胸に突き刺さった。警部はポケットから銃を取り出したが、膝から崩れ、整理した机に覆いかぶさるように倒れた。
銃弾は胸ポケットの〈叔父〉からの手紙を貫いていた。




