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転生した女マフィアは異世界で平凡に暮らしたい ~暗殺者一家の伯爵令嬢ですが、天使と悪魔な団長がつきまとってきます~  作者: 甘寧
スミリア

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71話

「さて、改めて話を聞こうか」


散々怒鳴られ、罵倒されて私の体力はゼロで精神的ダメージが限界に達した所でアルフレードが問いかけてきた。

未だにエルスは私を睨んでいるし、アルフレードに至っては睨んではいないが不機嫌オーラがすさまじく、この場に居るのがいたたまれない。


そんな私を見てクラウスが口を開いた。


「そもそも我々が襲われた要因には、我が国の王子であるノルベルト殿下の存在があります」

「……ノルベルトがこの国と同盟を組んだと言っていたな」


険しい顔でアルフレードが問いかける。

王弟であるアルフレードからすればノルベルトは甥っ子。

昔は可愛かったであろう甥っ子の姿でも思い浮かべているのだろうか。


「ええ。……それとは別にこちらの了承なく、ローゼル嬢とアラン殿下の婚約まで取り決めました」

「「──────ッ!?!?!?」」


アルフレードとエルスはまさに寝耳に水だったのだろう。一瞬にして纏っていた雰囲気が殺気に変わった。


いや、まあ、エルスは分かるけど、なんでアルフレード(あんた)までそんな顔してんの?と不思議に思ったが、とても言える雰囲気では無い。


「……なるほど……まさかそこまで愚か者だったとはな……」


そう呟くアルフレードは甥っ子を諭そうとする叔父さんなんて言う可愛い顔付きでは無い。


(は、般若や……)


身震いするほど恐ろしい顔付きに、ノルベルトに未来は無いな。とそっと心の中で合掌しておいた。


「その当人のアラン殿下ですが、ローゼル嬢とすったもんだあった後、国王に反発したようですが、それを許さないのがこの国です。植え付けられいた呪いが発動し、この状態で牢にいた所を救出してきました」


淡々と話すクラウスに耳を傾けていたが、話終える頃にはこの場にいる全員の顔付きは険しくなり言葉に詰まっていた。


この国の内情はある程度把握して来たが、改めてこの国が腐っている事が分かったのだろう。


「……………話は分かった」


静まり返っていた部屋に、アルフレードの声はよく響く。

その声色は落ち着いているが、必死に怒りを抑え込んでいるのがよく分かる。


「どちらにせよ早急に動かなければ手遅れになるのだろ?そこに寝転がっている小僧も我々の国も」

「ええ、だけど、ルドがこの状態じゃ……」


ここは魔術師が多く所属する国だ。こちらの魔術師と言えばルドだけ。対立できるルドが今は戦力外なのは正直不安で、腕に抱いているルドを見ながら呟くと「はんッ」と鼻で笑う声が聞こえた。


「我々を誰だと思っている?幾多の戦場を剣一つで越えてきたんだぞ?」

「そうです。そんなに弱気とは貴女らしくありませんね。もしかして、怖気づきました?」

「んなッ!?」


馬鹿にするなと言わんばかりにアルフレードが言い放てば、後援でクラウスが嘲笑うように言い放つ。


ぐぬぬぬ……と拳を握りしめるが、言い返すことはしない。

何故なら、この二人を相手にするには体力と時間が無駄だから。それに、二人が言っている事は間違っていないから。


(まあ、腹はたつけどね!!!)


「こうなったら大会云々言っている場合では無いな……」

「いえ、竜騎士団には予定通り出場してもらいます」

「は?」


アルフレードは溜息を吐きながら大会を途中棄権する事を示唆したが、それをクラウスが良しとしなかった。


「今はそんなこと言っている場合ではないだろ!!」

「今だからこそです!!」


どうやら、クラウスには考えがあるらしい。


「貴方がた竜騎士が欠場するのは明らかに不自然。いいですか?私達四人の事は国王の耳に入っています。ここに竜騎士団まで加わってしまえば、明らかな敵対行為と認められノルベルト殿下を制止するよりも先に国同士の問題になりかねません」


まあ、一理あるわ。

逆に国王はそれを狙ってんじゃね?その為に私達を泳がしてるんじゃないの?

ボンクラ王子はどうせ王席を外されるし、それを見越してるんじゃ?


竜騎士には王弟のアルフレードがいる。ある意味ノルベルトより権力を持っているこの人が動いてしまったら完全に国家間の問題になる。

アルフレードも馬鹿では無い。そこら辺も分かっているらしく大人しく黙っている。


「ノルベルト殿下の件は私とローゼル嬢で片をつけます」

「……国王はどうする。流石に見過ごせんぞ?」

「分かってます」


鋭い目付きで睨みつけるように言うが、クラウスは至って冷静に対応していた。


流石は腹黒騎士。悪魔と呼ばれているアルフレードに意見できるのはこの人しかいないだろう。


そんな事を思いつつ、言い合う二人をエルスの淹れてくれたお茶を啜りながら観覧していた。

暫くはこの二人の押し問答が続いたが、ようやく片がついたようで、クラウスが微笑みながらこちらに向き合った。

反対にアルフレードは不機嫌極まりない。


(一体どんな話し合いが……?)


まあ、ここで下手に話を拗らせても仕方ないので黙っていることにしたが、アルフレードの圧が凄い。


これは、また余計な事をするなと言う意味が込められているのだろう。


「えっとぉ~……閣下?」

「アルフレード」

「は?」

「アルフレードだろ?ローゼル」

「んな!?」


恐る恐る話しかけると、優しく微笑み返され思わず胸が高鳴った。無防備の時にイケメンの笑顔は心臓に悪い。


いつもの私なら「んな事言っている場合じゃないだろ!!」と怒鳴りつけているところだろうが、いつにもなく真剣な瞳に自然と口が動いていた。


「ア、アルフレード……様?」


その言葉を聞いたアルフレードは満足気に微笑むと、力強く抱きしめてきた。


「くれぐれも気をつけろよ」


耳元で囁くように言われた言葉はとても優しく、とても熱かった……

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