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転生した女マフィアは異世界で平凡に暮らしたい ~暗殺者一家の伯爵令嬢ですが、天使と悪魔な団長がつきまとってきます~  作者: 甘寧
ガドル王国

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第26話

ルドを見極めろと言われて早くも二日が経った。

解決策が見つからず、焦りと苛立ちが増すだけで行き詰っていた。


父様に認めてもらうにはそれなりの覚悟と実力が伴わなければならない。

黒魔術師ならば実力はそこそこあるだろうと思っているが、問題は覚悟の方。


頭を抱えていた所で、黒豹の姿でルドが現れた。


「お嬢。ええ天気やで散歩行きましょ」

「……あんた、自分の立場分かってる?」


私が呆れたように顔を上げながら言うが、当のルドは全く気にしてる素振りはない。

何か私だけ焦ってるみたいで腹立たしが、ルドの言う通り外はいい天気。

部屋に閉じこもっててもいい案が思い浮かばないし、気分を変えるのもいいかもしれない。


「そうだね。行こ──」

「いけません。そんな得体の知れない者と一緒に出歩くなど……」


立ち上がろうとした所で、後ろからエルスの冷ややかな声が聞こえた。


「えらい言われようやなぁ?」

「私は貴方を信用していませんので。お嬢様と契約していなければ私の手で始末しているところです」

「おぉ~こわっ」


ルドを睨みつけながら、エルスが殺気立つ。


こうなる事が分かっていたから、ルドの正体については時期を見て話すつもりだったのだ。

まあ、ルドもルドでエルスを刺激する様なこと言うからいけないんだけどね。


父様を納得させるよりも、エルスを納得させる方が骨が折れそうだと思い頭が痛くなる。


「はぁぁ~……ルドもエルスもいい加減にしてよ……」


私は昔から人を纏めるのは苦手なんだよ。


溜息混じりに言いながら痛む頭を押さえていると、ふと昔の記憶が脳裏に浮かんだ。


(そう言えば……こんな時ボスは、まずは二人で殺り合わせて互いの力を分からせてたな……)


あの時は無茶苦茶だなって思ってたけど、それが一番お互いを知るには丁度いい。

ルドに実力があると言うことをエルスに認識させれば、父様から課せられている「役に立つ」と言う部分はクリア出来る。……はず。


「ねぇ、天気もいい事だし、腕試ししてみない?」

「「腕試し?」」

「そ、そう!!ほら、エルスはルドの実力を知らないし、お互いの実力を知るにはいい機会でしょ?」


何とかお互いを認めさせるのに必死です。


「ほお?この男とですか?……殺さないと言う約束は出来かねますが?」

「……へぇ~?僕も舐められたもんやね。君ごときに殺られる訳ないやん」


売り言葉に買い言葉。

まあ、そのおかげで二人も俄然やる気になってくれたからいいけどね。




◇◇◇




「勝負は一本のみ!!いい?()()に殺さない事!!これ絶対条件!!」


私達は森の奥、人気の付かない開けた場所にやって来た。

この二人が剣を交えるとなると地下の練習場じゃ屋敷が心配だと思い、迷惑のかからない森の奥へやって来た。


既にエルスは戦闘モードでルドを殺気で威嚇しているが、ルドはそんなもの気にしていない様子。


「嫌やわぁ、殺気ダダ漏れやん。自分の感情もコントロール出来んの?」

「貴方に殺気(それ以外)の感情など持ち合わせていないもので」


私が提案したことだけど、今更になって凄い後悔。


(これ、どっちも生きて帰れるかな……?)


若干不安になっていると、さっさと始めろとエルスとルドにせっつかれた。


「えぇ~……じゃあ、いくよ!!──腕試し、開始(スタート)!!」


私が言い終わるか言い終わらないかのタイミングでエルスがルドに先制をかけた。


明らからかにフライングだけど……今更()()は止められない。


私は良く見える木の上で二人の様子を観察する事に。


エルスはルドに術を使わせる隙を与えないように攻撃を仕掛けているが、あれほど殺るなと言っているのに、本気(マジ)で殺る気で剣を振るっているのが丸わかり。

対してルドは、魔術だけだと思っていたが意外にも体術も出来るようで上手く剣を避けながら隙を伺っているようだが、このまま受け身ばかりだとエルスには勝てない。

それより何より、見てるこちらがつまらない。


実際問題ルドが魔術を使った時点で勝敗が決まると思ってる。

エルスがどんなに強くても、目に見えない魔術に対しては圧倒的不利。


だからこそ、使わせないように短期戦に持ち込んだ。

私だってそうする。


そのまましばらくルドがエルスの剣を避けながら逃げ回るのを繰り返ししていた。

見ているこちらはつまらなくなり欠伸をした所で動きがあった。

ルドが躓き体勢が崩れたのだ。

そこをエルスは見逃さず、全力で殺りにいった。


(あれは、まともに食らったらマジで死ぬぞ!!)


流石にマズいと思って私が間に入ろうとしたら……


キンッ!!


どこから出したのか、ルドの手には剣が握られていてエルスの剣を受け止めた。


「はぁ~、危ない危ない……さてと……そろそろ僕も本気でいかせてもらうで?」


相変わらずのんびりとした口調で言いつつ、ルドが立ち上がり持っていた剣をエルスに突き付け牽制した。

エルスは仕留めれなかったのを悔しがり舌打ちをしている。


(面白くなってきたな)


そう思いながらニヤッと微笑んだ。

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