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転生した女マフィアは異世界で平凡に暮らしたい ~暗殺者一家の伯爵令嬢ですが、天使と悪魔な団長がつきまとってきます~  作者: 甘寧
ガドル王国

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第17話

「本日の主役はこの二人だぞ?」


どこか楽しげに言う陛下の横にはこの国の王子ノルベルト・ヴァリエールがいた。そして、その隣には……


(やっぱりシャーリンだよね)


綺麗に着飾ったシャーリンが王子に手を引かれてやって来た。


皆はその姿に歓声を挙げ婚約を祝ったが、当の王子はどこか浮かない顔だった。

他に好きな人でもいるのか?とも思ったが王族という立場の人間は自分の気持ちなどあってないようなもの。

例え好きでない相手だろうと、結婚しろと言われればせざるを得ない。


(本当、私伯爵止まりで良かったよねぇ)


今の両親は恋愛結婚だから、私にも恋愛をしてもらいたいらしい。

残念ながら、その希望が叶うことはないけど。


前にエルスにこの事を話したら「お嬢様には(いとしみ)の感情が存在しないんですか?」とわりと本気で心配された。


まあ、前の人生でも付き合ったことはおろか、好きになった事もないから好きという感情がどんなものなのか分からない。


今考えなくてもいい事を考えていると、耳元で嫌な声が聞こえた。


「……逃げれるとでも思ったか?」


(しまった!!!)


アルフレードから逃げるところだったのを忘れていた私はアルフレードにガッチリ腕を掴まれた。

流石のルドも今回ばかりは大人しくしている。


「さて、この傷の責任どう取ってもらおうか?」


トントンと赤くなった3本線を指しながら言われた。

こんな事になるならルドを置いてくれば良かったと心底思うが、今更シラを切れる状況でもない。


(飼い犬の責任は飼い主の責任だしな……)


腹を括りアルフレードに向き合い頭を下げた。


「私の不注意でアルフレード閣下に傷を負わせてしまい申し訳ありません。できる限りの事はさせて頂く所存です」


精一杯のごめんなさいを伝えた。


すると、アルフレードはニヤッと不敵な笑みを浮かべたかと思うと、私の手を取りダンスホールの真ん中へ。


「じゃあ、一曲願おうか?」


まさかのダンスのお誘いに驚いた。


いや、驚いたのは私だけではない。周りの人達も驚きを隠せず呆けている。

今日は王子とシャーリンの婚約発表なのに、注目を集めているのは私達だった。


「ほお?思ったよりダンスがお上手で」

「当然です。淑女の嗜みですからね」


ふふん。と得意気に言ったものの、私は体を動かす事に関しては才能を発揮するが、学力面は目も開けられない成績なのだ。


「──では、こんなのも?」


グンッと急に体が回転し、ステップが変わった。

アルフレードを見ると、楽しそうに微笑んでいた。


(馬鹿にしないでよね。このぐらいどうって事ないし)


華麗にアルフレードのステップに合わせると、アルフレードは「流石」と一言。

音楽も佳境に差し掛かり、フィニッシュ。


その瞬間、拍手と歓声に包まれた。

アルフレードはダンスが終わっても私の手を握ったまま離そうとはせず、逃げることも出来ない。


「中々素晴らしいものが見れた。流石だなローゼル」


ニマッとしているのは狸親父こと国王陛下。

すかさずアルフレードと共に頭を下げた。


「とんでもございません。アルフレード閣下のリードのおかげです」

「ほお?そんな風に言ってもらえるとは光栄だな」


横でアルフレードがボソッと呟いたのを聞き逃さなかった私はすかさず「社交辞令ですけど?」とボソッと呟き返すと、アルフレードは肩を震わせて笑いをこらえていた。


まあ、しかし良かった。本日の主役二人より目立ってしまったから陛下に小言を言われるかと思っていたが杞憂だったらしい。


当の主役の二人だが、王子は相変わらず浮かない顔でたまに欠伸までする始末。横のシャーリンは私と目が合うと微笑みながら小さく手を振っていた。


(……あのボンクラ王子が)


いくら乗り気じゃないとしても、公の場では嘘でも笑顔で対応しろよ。と心の中で愚痴ってみるがどうしようもない。


そうこうしているうちに音楽が変わり、またダンスが始まった。

私の横にいたアルフレードはいつの間にか宰相殿に捕まっていた。

今がチャンスとばかりに会場の外へ出て、噴水が見えるベンチに腰掛けた。

ルドも襟巻に飽きたらしく「散歩行ってくるわ」と何処かへ行ってしまった。


「ふぅ~……疲れた。婚約者もシャーリンだったし、帰ろっかな……」


不本意ながらダンスも踊った。もう夜会(ここ)にいる理由がない。


「──まだ帰るには早いのでは?」


急に声がかかり、ギクッと肩が震えた。

忘れていたがアルフレードの他にもう一人、いたんだった……


「……クラウス様がこんな場所に何の用です?ご令嬢達が寂しがりますよ?」

「ローゼル嬢だってご令嬢じゃないですか」


私は寂しがっていない。どちらかと言えば絡みたくなかった。


クラウスはちゃっかり私の隣に座ると、私の手を取ってきた。

驚いた私は咄嗟にその手を叩き落とした。


「──あっ」


(ヤバッ。つい条件反射で……)


チラッとクラウスを見ると、俯いて肩が震えていた。……どうやら笑いを堪えているようだった。


え?手を叩き落とされて普通笑う?


「くくくっ。すみません……まさかこの私が手を叩き落とされるとは思いもしなかったので」


おっと、さり気なく自分モテます自慢ですか?

全員が全員好意があると思うなよ?


「やはりローゼル嬢は面白い……」

「は?」


ボソッと言われたのでよく聞き取れなかった。もう一度確認するが「なんでもありませんよ」とはぐらかされた。


(何故だろう……あまりここに長居するのは良くない気がする)


こんな場面、追っかけの令嬢達に見られたらたまったものじゃないと思い、仕方なく会場へと戻るとクラウスに伝え腰を上げた所で、クラウスに声をかけられた。


「──殿下の様子が気になりませんか?」


そう言われたら止まるよね。

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