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転生した女マフィアは異世界で平凡に暮らしたい ~暗殺者一家の伯爵令嬢ですが、天使と悪魔な団長がつきまとってきます~  作者: 甘寧
星詠み

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109話

──再び教会を訪れた。

昨夜と同じように牢屋へ続く通気口を通って内部へ入ったが、昨夜と同じはずなのに空気が重く感じる。


「何かおかしい」そう思うが、その原因がなんなのか分からない。それはこの場にいる全員が感じているようで、その場から動けなくなっていた。すると


カツン…カツン…


階段を降りてくる足音が聞こえ身構えた。


ゆっくりとその姿が露になっていく。そして、姿を現した人物を見て驚いた。


「な、なんであんたが!?」

「ははっ、いい顔。姉さんのそんな顔が見れたなら、こんな所まで来たかいがあったな」


真っ白なローブに身を包み笑みを浮かべているのは、ここにいるはずのない人物。


──イナンだった。


「なんでここにいるかって?姉さんったら相変わらず忘れっぽいよね。俺は未来を視れるんだよ?」

「そんな事分かってるわよ。なんの為にいるかって意味よ」


睨みつけながらも警戒は怠らない。

イナンは変わらぬ笑顔を向けながらこちらに歩み寄ってくる。


「そんなの、姉さんを連れ戻しに来たんだよ」

「は?ふざけないで。私は戻る気なんてないわよ」

「へぇ~…それは()()騎士の為?」


目を細め、地上へと続く階段を見た。

すると、再びカツンカツンと誰かが下りてくるのが分かった。


もしかして……と思いつつ姿が見えるのを待っていると、降りてきたのはやはりアルフレードだった。


「やっぱり、あんたか……」


思わず苦笑してしまう。


「またお前らか。次はないと言ったはずだが?」


こちらを見る目は、更に冷たくなり殺気に満ちている。


「あら、ネズミがいると聞いてやって参りましたが、イナン様のお知合いですか?」


アルフレードの後ろから顔を出したのは、淡いピンク色の髪をした可愛らしい女性。すぐにこの女が聖女だと分かった。


身体を擦り付けるようにアルフレードの腕に絡みついている。普段のアルフレードならば女性にすり寄られるを嫌うはずなのに、嫌がるどころか守るように背後に庇い、優しく微笑み返している。


(ッ!!)


他人にあんな笑顔を向けるアルフレードを見たのは初めてて、胸が締め付けられるほど痛い。


「どうしたの?なんでそんな泣きそうな顔してんの?」


イナンが揶揄うように聞いてくるが、とても話せる状況じゃない。

私の様子を察したクラウスが、庇うように前に出て聖女に問いかけた。


「すみません。そちらの方は聖女様と見受けしますが、そちらの騎士は我々の国の者。返していただけませんか?」

「それは出来ませんわ。アルフレード様はわたしくしの運命の方ですもの」

「今のアルフレードは正気ではありません。そんな者と一緒になっても幸せにはなりません」


クラウスが必死に聖女を説得させようとするが、その言葉を「黙れ」と遮る声があった。


「私が正気ではないと何故断言できる?確かに私はこの国の者ではないが、愛する者の為ならば国など捨てられる。クラウスと言ったか?私はそちらの国に戻る気はない。愛する者と共に、生涯をこの国で終えるつもりだ」


はっきり聖女の事を『愛している』と宣言され、私もクラウスも言葉を失い、目の前が真っ暗になった。それと同時にどうしもうない虚無感に襲われた。


「…………分かった…………」

「ちょ、ローゼル嬢!?どうしたんですか!?」


踵を返し、その場を後にしようとする私にクラウスが慌てて声を掛けてきた。


「もう何言っても無駄よ。あっちも構うなと言ってるんだからいいんじゃない?」

「いや、何言ってるんです!?アルフレードを連れ戻しに来たんでしょ!?」

「だから、その本人が帰りたくないって言ってんだから仕方ないでしょ!?」


苛立ちながらクラウスに当たり散らした。自分でもクラウスに当たるのは違うと分かっている。分かっているのに、自分の感情が抑えられない。こんなのは初めてだった…


クラウスもそこを分かっているからなのか、顔を歪めて黙ってしまった。


これ以上ここにいたくない私は、足早にその場を出ようと外に繋がる通気口に足を掛けた。


「ちょっと待ってよ。姉さんは帰さないよ」

「……あんたに指図される筋合いないわ」

「駄目だよ。何の為にここまで来たと思ってんの?姉さんを確実にものにする為に決まってるじゃん。人に執着しなかった姉さんが、人に執着するなんてあり得ない。姉さんに執着されていいのは俺だけなんだよ」


そう言うイナンは、不機嫌で狂気に満ちた表情で睨みつけてきた。そんな表情見るのは初めてで、ゾクッと粟立った。

昔から私に執着しているとは思ったが……今なら分かる。


──こいつは異常だ。


「なるほどの…」


ユーエンがぽそっと呟いて前に出てきた。


「お主か、お告げを残したという者は」

「へぇ?察しがいいね」

「まあ、お主らより数年長く生きとるからな」


数十年の間違いでしょ…と声にする雰囲気ではなかったので、ひっそりと心の中で呟いておいた。


「小娘とお主の関係はどうでもいい事じゃが、そっちの騎士は()()してやった方がいい」

「初対面の爺ちゃんの言う事聞くとでも思ってる?」

「阿呆!!このままでは、そやつは壊れるぞ!!お主も分かっておろう!?」


ユーエンの叫びにどういうことかと問い詰めた。




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