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転生した女マフィアは異世界で平凡に暮らしたい ~暗殺者一家の伯爵令嬢ですが、天使と悪魔な団長がつきまとってきます~  作者: 甘寧
ガドル王国

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第11話

この世界には魔術を使える人間がいる。

殆どが教会に仕えている神官や王城で魔術を研究する組織に属している者しか使えないが、稀に平民でも魔術を使える者がいる。俗に魔女や術者と呼ばれる者。

その中でも危険分子とされているのが黒魔術師。


人に危害を加える為に術を使う。そして、その力は増大。

魔術の使えない私には天敵とも言える相手。その相手が(バック)にいるという事。


(マジか……)


そんな事父様一言も言ってなかったけど!?


そこでハッとした。

もしかして……わざとか!?面倒臭い事が嫌いな私を行かせるためにわざと言わなかったのか!?


私の脳内で父様がほくそ笑んでいる姿が映し出された。


(あんのクソジジイ!!!)


顔を覆いその場にしゃがみこむと、クラウスが心配して声をかけてきた。


「……ローゼル嬢?大丈夫ですか?やはり、私が共に……」

「いえ、大丈夫です」


むしろ魔術師がいると分かった今私一人の方がいい。


(こうなりゃ仕方ない。やってやらんぜよ!!)


意気込み新たに立ち上がった。


クラウスは最後まで私一人で行かせるのを渋っていたが、部下に諭され劇場へと向かって行った。


その後ろ姿を見送ってから、私はヘルツェグ男爵邸へと向かった……




◇◇◇




ヘルツェグ男爵邸へと着いた私は只今絶賛逃走中。


それは何故かと問われれば、人気ない窓から屋敷の中へ侵入したところ今の状況に陥った。

どうやら、屋敷には侵入者が入り込んだらすぐ分かるような術を施されていたらしく、それに気づいた衛兵がすぐさまやって来たらしい。


(──これだから術者は!!)


ブツブツ文句を言いながら逃げているが、先程から気になっている事がある。


──この屋敷はおかしい。


人の気配が感じられない。


(これだけ派手に逃げ回っているのに使用人と出くわさないなんて事ある?)


確かに男爵クラスの屋敷だから、シェリング家(うち)よりは狭いけど、そこそこな屋敷だ。

この程度の屋敷なら使用人は少なくとも10数人程度。

その10人程度に出くわさない。


おかしいと思い後ろを振り向くが、誰も()()()()()()()()


(確かに今私は衛兵に追われてたはずじゃ……)


そこで察した。


違う!!()()()()()()()()()()()()()!?

こちらの手の内は読まれていたということ!?

では、ヘルツェグ男爵は何処へ!?


(劇団!!)


くそっ!!嵌められた!!


奴らは多分、私を撒くことだけを考えて行動している。

聖騎士団が来るとは予想外の案件だとしても、シェリング家の娘である私が邪魔な存在である事は間違いない。


でも、わざわざ屋敷を空にする必要がある?


──・・・・・・まさか?


「ちょっと勘弁してよ!!?」


一つの仮説が浮かび上がり、私はすぐに窓をぶち破り外へと出た。その瞬間……


ドンッッ!!!!!!!


先程まであった屋敷は跡形もなく吹き飛ばされた。

その衝撃で私自身も吹き飛ばされた。


「……っててて……マジ最悪なんだけど……ってそんな事言ってる場合じゃなかった!!」


危機一髪というのはこういう事なのだろうと、土埃が上がっている瓦礫の山を見ながら思った。


こっちにヘルツェグ男爵はおろか術者もいなかったという事は、劇場の方に行ってる可能性が高い。

聖騎士団とは言え、術者相手だと分が悪い。


「──ったく!!父様一番重要な情報掴んでないんだから!!」


脳内でヘラヘラ笑いながら謝る父様の姿を思い浮かべ、イラッとしながらも劇場へと走った。



数分後……



「……はぁ……はぁ……着いた……」


滴り落ちてくる汗を拭きながら呟いた。

久しぶりに全力疾走したので、息が苦しい。

この件が終わったらもう少し体を鍛えようと心に誓った瞬間だった。


「……さて、団長様は……」


劇場の外を見渡すが、見張りの騎士が数名いるだけでクラウスの姿はない。


(ちっ!!遅かったか!!)


「すみません!!団長様は……?」


急いで見張りの騎士に問いかけた。


「これは、シェリング伯爵家のお嬢様!!」


……そんな驚くことか?


声をかけた騎士は、私に気がつくと一瞬驚いた様子を見せたが、すぐに持ち直しクラウスの行方を教えてくれた。


「団長は先程数名の騎士と共に中に入っていかれたのですが……」


やはりそうか。ならば早く後を追わねばならない。


「そうですか。分かりました」


私は急いで劇場の入口へ向かおうとした。


「流石はシェリング家のお嬢様ですね。もう男爵を始末してしまわれるとは」


目を輝かせ、尊敬の眼差しを向けられながらそんなことを言われた。

まさか下っ端騎士がシェリング家()の事を知っているとは思いもしなかった。


早く先に進みたいのに、この騎士は更に話を続けた。


「実は僕、シェリング伯爵家のファンなんです。まさかこうやって一緒に任務を遂行できるなんて……」


のんびり構えた騎士と話している暇はない。


「ごめん、それ今話すことかな?今の私は少々機嫌が宜しくないの。これ以上そのくだらないお喋りを続けるならその口、話せないようにするよ?」


これでもかと殺気を向ければ、先程までの笑顔は何処へやら。真っ青な顔をして、道を開けてくれた。


「ごめんなさい。でも今は緊急事態なの。──……でも、シェリング家を好きだと言ってくれてありがとうございます。続きはこの件が終わったら改めて聞かせてくださいね」


ウィンクをしながら返すと、先程まで真っ青な顔が今度は沸騰したように真っ赤になった。


(……ちょろ……リトマス紙かよ)


スンと真顔に戻り、劇場の中を進んで行った。


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― 新着の感想 ―
[良い点] まだ読み始めたばかりですが、それぞれキャラが立っていてよかったと思いました! [一言] 不意打ちの「リトマス紙かよ」に撃ち抜かれて一分ぐらい笑ってしまいました! 楽しんで読ませていただいて…
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