不届者のお詫び
前回のお話
ブッ殺。
「我が城に勤める者であれば当然と思っておったが、田舎の村娘がここまで肥えているとは、良き時代である。娘よ、まこと良き恵体である。誇るが良いぞ。」
「よし、殺す。」
あっ、いっけな〜い!
うら若き乙女が物騒な言葉使いしちゃ、ダメだよね!
私、反省⭐︎
さて、どう殺そう。
「なにぃ!?ま、待て待て、平和な世になったのであろう?
何があった、魔物か?敵兵か?」
ほう?自覚が無いと見える。
うら若く可愛い乙女に対して「肥えている」?「えたい」?
ハァ??
…………「えたい」ってなんだ?
……まあいいや。
とりあえず凡そ女の子に対して礼儀のなってない言葉である事は乙女の本能で理解出来る。
自覚が無かったら許されると思うなよ?
自覚が無いって事はあれだ、素直な感想って事だ。つまり本心だ。つまりコイツら乙丸への礼儀がなっていない失礼な不審者だ。
殺す。
もし自覚があったなら?
それはただの悪口、誹謗中傷だ。
殺す。
「まぁ待て、待て小娘よ。剣呑な気配を出すでない。
敵なら我が滅してくれよう。しかし周囲にはお前に似た気配が3つあるだけで敵意ある者は居ないようだぞ?
もしや我に感知出来ない程の敵なのか?どこに居る?」
やれやれ、コイツは理解していないらしい。
敵はお前だ。
殺す。
「あぁ、もしや我か?
我が何か気に触る事をしてしまったか?
過去には部下や義理の娘にも殺意を向けられた事があったが、また何か礼を失したのか?
時代が変われば文化も変化していよう、我も現代の礼儀は知らぬ故、許して欲しい。詫びようではないか。この通りだ、すまぬ。分からんのだ。」
ハァ、なるほど?
確かに古代と現代じゃあ文化も違けりゃ礼儀も違うだろうね。ならまぁ仕方ないか……。
とはならない。ここは現代だ。
現代の流儀に倣え。
殺す。
古代の文献とかで読み齧った言葉回しでごっこ遊びして楽しかったか?
殺す。殺してやるぞ、魔王。
うん、今だけなら古代の人々と思いを一つに出来そうだ。
魔王を名乗る不審者は殺してやらねばならない。
良い魔王は死んだ魔王だけだ。
そうだよね?古代の人々よ。
殺す。
「そうだ、何が欲しい、何かして欲しい事は無いか?
これでも万能と謳われた魔王である。
大抵の事なら叶えてやれるぞ?」
「んな小さな穴から指しか出せない分際で何言ってんのよ。
万能?自分のご飯も準備出来ないような万能不審者に叶えてもらう事なんて何一つ無いわ。
それとも何?カッコよくて性格が良い、なんならお金持ちで親も面倒くさくない私の未来の旦那さんでも連れてきてくれるっての?」
「おぉ……なんだ強欲だな娘……。
食事はまぁ、そうだな…。出来ない事ではないのだが、如何に万能とは言っても自分の意を通すには中々に制約や影響がな……。
我が影響が全盛であった頃ならばいざ知らず、本当に時代が移り変わっているのならばそんな男の準備も出来ぬ。」
「なんだ、結局は口だけって事じゃない。
出来ない事を出来る、なんて言うもんじゃないわよ。大体あんた、親からオオカミ人間の少年の話とか聞いた事ないわけ?嘘をつき続けると碌な事が…」
「だが!!!そうだな、お前がちまちまと何やらやっている作業を手伝ってやる事くらいなら造作も無いぞ!?それで手打ちにならぬか!?なんだ?大ぶりの芋を袋に分けておるのか?
ならばホレ、これでどうだ!?」
不審者が私の文句を遮ると、小さな穴から指がヒュッっと飛び出てきて指先に光が灯った。
淡く青いその光はそのまま仕分け前の芋が入った大袋の周囲をくるりと回ったかと思えば、そこに詰められていた大量の芋達が飛び出してきた。
「うぇ!?な、なに!?何してんの!?」
「まぁ見ておれ、分ける袋はそれだな?」
芋は宙に浮かんだまま、指の動きに合わせてグルリと周囲を周り、そして。
「え、えぇ〜……嘘ぉ……ヤバぁ……。」
「これで良いか?詫びにはなったか?」
あと50袋は残っていたであろう仕分け前の大袋はみるみる内に減っていき。
後にはきっちりと仕分けられたであろう商品用の袋と規格外の芋が詰まったボロ袋が大量に並んでいたのだった。
ちなみに『恵体』とはネットスラング発祥の言葉だそうです。(by Google先生)
最近の言葉なので正しい読みすらあやふやだそうですが、ウチのあいぽんが「えたい」で変換してくれるのでそれを採用してます。




