自称:魔王の言う事にゃ
「なぁ娘よ。もしや、先程の伝言を伝えておらぬのではないか?
……いや、まさかここは我が城でもないのか?」
不審者の城が何処かは知らないけど、ここは私の家だよ。
しいて言うなら、我が家の母屋の隣、ひいじいちゃんが自力で建てた元:ひいじいちゃん家で現:作業小屋だよ。
「アイテムボックスが開いておるという事は、勇者が居る筈だが……気配を感じぬ。
よもや娘よ、お前が言っていた勇者の死とやら……真実なのか?」
「そもそも嘘つく理由も無いっての。
ここは大農地ピマルスク領にあるタザ村だよ。勇者だとか魔王だとか、何百年も前の話だよって感じ。」
「ピマルスク…?何百年前……!?
ありえん、そうだとするなら、何故このアイテムボックスが開いておるのだ!!」
「あいてむ、なに?あぁ、コレの事?そんな名前なんだ、ふーん。」
この不審者の能力、あいてむなんちゃらとか言うらしい。
たぶんだけど、父曰く「男なら誰でもあるそういう時期」ってやつになんかすごそうな能力が目覚めたもんだからごっこ遊びでもしてみたくなったんだろう。
「そんで?その魔王様(笑)は何の用なわけ?こちとら田舎の村娘Cなんですけど。」
「娘よ、お前本当に勇者の知り合いではないのか?こちらを苛立たせる口調が似ておるぞ。
あんな奴に似てしまっては嫁の貰い手が無くなってしまう故、気を付けた方が良いぞ。」
うるさいな。良いんだよ私は。
まだ見ぬ未来の旦那とはまだ出会ってないだけなんだからさ。たぶん。
「勇者が死んだとなると、アイテムボックスが開いている道理が立たぬ。
しかし実際に……む。微弱だが、勇者の気配を感じる。」
「へぇへぇ、勇者の気配ね。どこに居るって?」
「……おかしい、そこら中に勇者の気配がある。
しかも、だ。気配がどれも微弱過ぎる」
芋の仕分け、5袋終わり……残りは、ひぃ、ふう、みぃ…………う〜ん、数えると億劫になってくる。まだまだ終わる気配が無い。
せめて今週の集荷までに半分は終わらせておきたい。税金払えなくなっちゃうからね。
「それに、娘よ、お前からも勇者の気配がする。これは何が起こっている。訳が分からん。それに村というには人の気配が多い上に距離が離れすぎている。」
「そりゃ、どいつもこいつも勇者の子孫ばっかりだからね。そういう事もあるでしょう。
それに農村だよ?畑がずらーっと並んでる中でみーんな畑仕事してんの。」
村の共有財産にトラクターがあったり、最近はどこも小型の耕運機持ってたりするから畑はデカくなりがち。機械とか魔法使えるなら良いんだけど、人力でやる作業も負担がデカくなって大変ったらないよ、全く。若いシティガールがやる事じゃない。もっとなんかこう、オシャレな仕事とかないんだろうか。
まぁ、無いか。農村だし。
「勇者の子孫……そうか、やたらめったらに種をばら撒いておったが故に、まぁ不思議はないか…。
ハァ……生物としては勝利者と言えるだろうが、人としてなんと恥ずかしい…。」
「勇者のおかげで平和になって、生活はどんどん豊かになって、今に至るってわけ。
…ま、苦労もあるけどねー。」
「平和、平和か……。
確かに勇者のおかげと言えような…。あ奴無くして平和は成らなかった。
うむ、お前の様子を見るに、豊かにもなったのだろう。」
なんか溜め息ついたりしみじみしたり、忙しい不審者だなぁ…。
「我が城に勤める者であれば当然と思っておったが、田舎の村娘がここまで肥えているとは、良き時代である。娘よ、まこと、恵体である。誇るが良いぞ。」
は?ブッ殺。




