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真夏の氷河期と親友と犬のタロウと

作者: 九条 ねぎ

この物語は、「7月」「温もり」「絆」をお題として書いたものです。

 7月も半ばを過ぎ、外を少し歩くだけでも汗が滲み出るような暑さ。

 俺が生まれた頃くらいから、地球温暖化が深刻な問題になっているみたいで、年々気温が上昇してるらしい。


 でも、今は地球温暖化とかどうでもいい。


「はぁぁぁぁ……」


 放課後の教室。机に突っ伏して、俺は盛大に溜息をついた。

 どうしたのかって? 只今絶賛氷河期中なんですわ。


「すごい溜息だね、A君。彼女と別れたのがそんなにショックなの?」


 前の席から掛けられた声を聴いて、机から顔を上げる。

 目の前には、中学校からつるんでいる、親友の意地の悪い笑顔を浮かべた顔があった。


「うっせ、彼女に振られてハートブロークンな俺に、笑顔で塩を塗り込むんじゃねぇよ」

「はっ、ウケる」

「ウケねぇよ……」


 

 昔からコイツはことある事に俺をからかって来る。いつもなら俺自身もコイツのからかいに煽り返ししたりしてるんだけど、流石にそんな元気は今は無い。


「なんていうか、今まで帰り道で手を繋いで帰ってたのが無くなったって考えるとめちゃくちゃ悲しくなってくるんだよ……」

「いや、何その小学生カップルみたいな付き合い方、寧ろ最近の小学生の方が進んでるんじゃない?」

「別れ際に言われたわ、それ……『小学生同士の付き合い方みたいで嫌だった』『もっとガッツリ来て欲しかった』って……」

「あちゃぁ……」


 親友も思わず言葉を無くしたようで、若干眉間にシワが寄っている。

 シワが寄ったのを見届けた後、俺は力尽きる様に、またもや机に突っ伏す。額を思いっきりぶつけて、小さく呻く。


「あ゛〜ダメだ、心が死にそう。早急に心に温もりが欲しい」

「重症だね。んじゃあ今から家来る? タロウ(犬)でも撫でてやんなさいな。アニマルセラピー的な効果あるかもよ?」

「うぅ、行く……」


 親友の言葉を聞いて、机の横に掛けてあった鞄を手に持ってノロノロと立ち上がる。

 既に準備していた親友は、扉の前で待っていてくれている。


(なんだかんだでコイツは、俺がしんどい時はそばに居てくれるんだよな……)


 並んで、閑散とした廊下を歩き出す。

 ただ隣に居るだけで、こんだけ気分が楽になるのだから、コイツとの絆はこれからも大切にしていきたいと思った。





「今日はありがとな、タロウも元気でな?」


 A君はお礼を言うと、タロウをわしゃわしゃと撫で、満足したのか踵を返して歩き出す。

 学校を出る時の顔に比べたら、大分明るくなったようでなによりだ。

 A君の姿が見えなくなるまで見送ると、タロウの首元をくしゃりと撫でる。


「タロウ〜? 今日は楽しかった?」

「わふっ」


 タロウの返事がなんとなくおかしくて、思わずクスッと笑うと、A君の帰った方向をもう一度見て


「『私』も楽しかったな……」と呟いた。


 


 この胸に灯った感情の温もりは、彼へときっとそのうちに……

この様な稚拙な作品を読んでいただき、誠にありがとうございました。

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