いよいよ
異世界のご飯とか「なんかよくわからんが美味しい」っていうコメントしか出てこなさそう。
「こちらの食事が口に合えばいいんだが……」
夕飯の為に食堂へ行くと、既に王子が椅子に座って待っていた。
王族待たせるとかやばいな。
優しい王子でよかった……。
それよりも……。
「…………」
「どうした?」
「あ、あの。マナーがなってないと思いますが、大目に見ていただけると……」
マナーなんて気にしてなかった事をすっかり忘れていたのである!!
いや、本当に忘れてた。
テーブルマナーなんて意識して学んだ事ないし、なんなら1回もそういう所に行ったことは無い。
「あぁ、そうか。文化も違えばマナーも違うからな。気にする事はない」
「ありがとうございます……」
ほぼ同じだと思うけどね!
っていうか、王子と2人でご飯なんだね。
周りにメイドさんとか執事さんとかはいるけど……。
第1王子って言ってたから兄弟がいると思ったし、王様と王妃様がいるんじゃね?
と思ったら、すぐ疑問は晴れた。
「本来なら両親……この国の王と王妃、そして兄弟達と共に食事をするのだが、ルリは来たばかりでまだ気持ちが落ち着かないだろう。謁見は明日に回してあるんだ。……それに、王族と共に食事をするというと、あまり喉を通らないだろう」
王子……!
めっちゃ気を使ってくれてる!!
本音を言うなら王子とご飯っていうのも緊張するけどな!
後でお礼になにか献上しよう!
まぁ、それは置いといて……。
ここでのご飯って、コースで出てくる訳じゃなくて一気に配られるんだね。
まぁ、地球の貴族のご飯事情とかも知らんけど。
うん。
ハーブ?をふりかけられたステーキにパン。
ちょっと黄色っぽいスープになんの野菜か分からないサラダ。
グラスに注がれる水。
困った事にパンと水位しか確証が持てない。
これ何の肉?これどういう野菜?
わからん!
内心で戦々恐々としてると、王子が「食べようか」と言ってくる。
「い、いただきます」
「あぁ」
うーん、ちょっと水のもう。
……水だ。
当たり前か。
食べる順番とか無さそうだし、ステーキ食べよう。
何の肉か分からないけど、美味しそうなのはわかる。
「…………!!うっっっっま………!」
うっっっっま!
牛肉っぽい感じだ!
ちょっとシカっぽさがあるから牛ではないんだろうけど!
ハーブは元々詳しくないからなんとも言えないけど、肉とよくあってる!
うわ、米欲しい……。
「口にあったようで良かったよ」
「……うぅぅぅん、美味しいです……!」
こういう時語彙力欲しいね。
溢れる感動を、拙いけど王子に伝えた。
微笑ましげに見られて終わったけど。
正気に戻って思い返すと恥ずかしい晩餐でした、とだけ言っておこう。
「今から別館へ移動する。そこに魔力を調べてくれる魔女がいるんだ」
「魔女?」
食後のお茶を飲み終わった後、王子はこれからどこに行くかを説明してくれた。
魔女がいるんだね、この城。
何となく、こういう世界って「魔女」を差別してるイメージがあったんだけど。
「この国で一番の魔法使いだ。色々と頼りにさせて貰っている」
「へぇー、凄い人なんですね」
「あぁ。……既にダール達が向かっていることだろう。俺たちも行こう」
そうして王子の後ろをついていく。
あ、ちなみに靴はサンダルみたいなの借りてるよ!
流石に裸足はアウトって事でメイドさんが持ってきてくれた。
別館は東側にある渡り廊下を渡れば行けるらしい。
薬や毒が置いてあるから、普段は扉を閉めて誰も入らないようにしてるんだとか。
緊急事態が起こった時の為に渡り廊下があるくらいで、普通の砦といった感じだ。
着いたら早速、ダール達が扉を開けてくれる。
地下で魔女が待っているらしいから、ダールを先頭についていく。
………暗い。
松明あるけど全体的に暗い!
夜来るには遠慮したいなこれ……。
「リリアム、聖女を連れてきた」
「……」
ギィィ……。
地下室に着いた王子は、扉の向こうにいる「魔女」リリアムさんに声をかけた。
名前からして女性だね、多分。
なんの応答も無かったけど、静かに扉は開いていく。
そこから顔を出したのは……。