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ギフト

なにか貰わないとやってらんねーよ!

てやんでぃ!べらぼうめぇ!!


と、自分だったら思います。



「うぐぅ………帰りたい………帰りたい……………はっ!」



気付いたら泣きながら不貞寝していたらしい。

いい歳して恥ずかしいぜ……。

目を開けて見渡したら、なんだか白い空間に居る。



あれ?



いつの間に私は移動したんだろうか。

待て待て、ちゃんとあの豪華な部屋に居たはず。

ふっかふかの一人で寝るにはデカすぎるベッドで寝たはず。


「……………なんだここ!!」


また、召喚とかされた系な?

再召喚的な??

デジャヴ!!


「気が付きましたか?」

「ホゥア!?」


後ろから声がかかる。

さっきまで誰も居なかったじゃん!!

怖いからやめて!!


勢いよく振り返ったら、まぁー美人さんがいるではないか。


黒くウェーブのかかった艶やかな髪に、薄い赤色に色づいた唇。

すっと通った高い鼻筋に、優しそうなタレ目。

瞳は金色に輝いていて吸い込まれそう。


服も、なんだか聖母マリア様が着ていそうな布がたっぷりとした露出の少ないもの。



はい?

誰?


「初めまして。ワタクシはこの国で多くの信仰を集める神、名をフォルティナと申します」

「…………はぇ?」


………はぇ?


ほんとに待ってまじ意味わからん何のドッキリ?は??


「いや、いやいやいや、か、神様?ですか??」

「はい」

「え、えー??え?あの、え?」

「戸惑うのも無理はありません。多くの神は、人間の前には姿を現しませんから」


そりゃね。

ホイホイ神様が見えてたら文化変わってるね。

神様主体の宗教国家になってたよ。


じゃ無いよね。

まずこの状況の説明だよね。


「あの、ここは……」

「貴女が眠りに落ちたのを見計らい、深層に入り込んだのです。貴女と話をする為に」

「じゃあここは、夢……でいいんですかね?」

「ええ、夢です」


夢かーい。

夢ならいいやー。


ってなるか!!


「貴女には、伝えておきたいことがあるのです」

「な、何でしょう」

「貴女を貴女の世界から引き離した事に、ワタクシも手を貸していたのです」

「……………え」

「この世界が危機に陥っていることは、もう王子から聞いていますね?」

「あっはい」

「我々神も、その事に焦りを覚えているのです。だってそれは、この世界の住人では対処出来ないのですから」



どういう事だ。

あの王子達が私を召喚した際に、この女神様も一枚噛んでいて……。


そうか、この世界の人達に聖なる浄化の力が宿らないから、あの………なんだっけ、ナントカ王子が「聖女や勇者しか浄化出来ない」って言ってたのか。


少し考えれば疑問として浮かぶのにスルーしてたわ……。


「人間達と同じように、この世界のバランスが崩壊してしまうのは何としてでも阻止したいのです。ワタクシたち神を愛する生物を、どうして見捨てることが出来ましょうか」

「あ、あぁ。そうですよね……」

「しかし、この世界にはもう魔法や魔術が発達していて、プラスとして何かを加えることは出来なくなってしまいました」


……スキルポイントの割り振り的なやつかな……。

そうなると、地球はどんなスキルが振られてるんだろうか。

って、こんな事考えてる場合じゃないな。


「なので、新しく加えることが出来るのは異なる世界から来た……それも魔力と呼ばれる力が無い者と決められたのです」

「……魔力……が、元々ないから新しく付け加えることが出来る…という事ですか」

「はい、魔力が無いからこそ魔力を注げるのです」

「でも、元々魔力があった方が馴染みやすいんじゃないでしょうか?」

「逆なのです。個人の魔力が拮抗し、その者はいずれ拒否反応で死んでしまうでしょう」


こわっ!!

怖いわ!!

あ、待てよ。良く考えれば臓器移植もそんぐらいリスク高いよな……。

魔力付与は臓器移植と考えればわかりやすいな、うん。

この世界の人達は、ドナーが間に合っても体質に合わなくて、異世界人は拒否反応が出ないから移植出来る。



「うーん、なるほど……そういう仕組みでしたか」

「はい。……貴女を、大切な物から引き離した事は謝罪させていただきます。ですが、我々もこの世界を諦めたくは無いのです」

「…………いや、まあもう来ちゃったものは仕方ないですから……」

「…帰りたい、と申していたでしょう」

「うっ!……そりゃ、正直に言えば帰りたいですよ。でも、もう引き受けた以上はやらなきゃ」

「………貴女のその優しさに、深く感謝致します……」


やーめーてーよ!!!!

恥ずかしい!!!

優しいとかじゃないから!!!


「そんな貴女に、何も得がないのは如何なものかと、ワタクシ達神は考えました」

「ん、うん?得、ですか?」

「無理矢理連れてこられて、浄化してまわる日々。富や名声を手に入れられても、それを望まない者からしたら要らぬものでしょう」

「そうですね」

「……酷な事ですが。帰りたいと言った貴女を、元の世界に戻す事は出来ません。その代わり、欲しい物を一つだけ授けましょう」

「え?欲しい物?」

「欲しい物ならば、何でも良いのです。どんな強者でも敵わない高い戦闘能力?それとも、どんな賢者でも持ち得ない圧倒的な知識?もしくは、未だ誰も身に付けたことの無い新しいスキル?」


そんな一気に聞かれても…!


帰れるんだったら、自由に行き来出来る様にって言うんだけどな……。

まぁ、仕方無い。




えー、戦闘能力?

そんなものより防御力だよ。って言うか危ない目に自ら勇んで行くのはいくら強くても嫌だよ。


じゃあ知識?

頭パンクしそうになるのが容易に想像できるから遠慮しとく。それに、知らない方がいいこともあるでしょうよ。


だったらスキル?

………ぶっちゃけ、魔力検査して貰ってないからどんなスキルを待ってるかわからないよな……。

そもそも持ってるの?私。


「あの、フォルティナ様?」

「何でしょう」

「私って、スキル持っていますか?」

「………いいえ」


まじかー!!!!


あからさまに目逸らしたけど、絶対この女神様付け忘れたよね!

召喚前に出て来なかったし、普通は召喚前にくれるよね!


って召喚される事に普通って何!?


「え、えぇー……。じゃあスキルでお願いします」

「では、どの様なスキルにしましょうか?」


あ、考えて無かった。

どうしよ。

あー、さっきの話じゃないけど、スキルポイント割り振りをゲームでしてたの思い出すわー。

そう言えばあのゲームクリアしてないよなー……。

地球が恋しい……。



はっ、そうだ!!!


「じ、じゃあ!地球の物を欲しい時、手元に送ってもらうって言うのは有りですか!?」

「………あまり、おーばーてくのろじーと言うのは頂けませんが……」

「あぁー………」

「使用後、何らかの形が残らないようなものであれば可能です」

「……それじゃあ、食べたら無くなる食料品……とかですか?」

「そういうことになるでしょう。…あぁでも、それだけでは不都合もあるでしょうから、一部の物も取り寄せ可能に致しましょう」


あんまりオーバーテクノロジーでは無い何かで食料品じゃないものと言ったら……ボードゲームとか?

あ、工具とかお香とか、パワーストーンとかもいけるか?


科学的な何かが多くなかったらいいんだろう?


「じゃあそのスキルでお願いします」

「……」

「…やっぱり、駄目ですか?」

「いえ、これはスキルではなくギフトに致しましょう」


はて、ギフトとは。


「ギフトは文字通り神からの贈り物です。普通、スキルには成長する伸び代があります。例えば、炎系統のスキルがある者でしたら【高温に耐えれる】から、【火に関することで負傷しない】と言ったふうにスキルを成長させることが出来ます」

「ふむふむ」

「ですが、ギフトは最初から伸び代いっぱいに成長しきった能力。つまり、鍛練や修行をしなくても最高値になっているのです。そして、その多くは誰も持ったことの無い能力」

「へぇー」

「スキルならばデメリットがある物も存在しますが、ギフトは一切のデメリットはありません」

「………成程、そういう事ですか」


つまり、何らかの制約が付いてしまう前に、自由にできるようにしてしまえ、と。


「それでは付与致します」

「お願いします」



と言って、女神様は私の頭を撫でる。


ん?撫でてる……。

撫でてるだけだ。


「あの…」

「………はい終わりましたよ」

「えっ、今のがですか?」

「えぇ、これで貴女にギフトが贈られました」

「え、じゃあもう使えますか?」

「ふふふ、夢の世界では使えませんよ」

「あっそうか」


ここ夢だった。

そう言えばそうだったわ。


「何か欲しい時は、『選択』と心で唱えなさい。そうすれば、頭の中にハッキリとしたイメージが出てくるはずです。これだと思うものを決めて『抽出』と唱えれば、それ等は貴女の手元に届くでしょう」

「ありがとうございます」

「……帰すことは、ワタクシには出来ませんが…これくらいならば力を貸すことが出来ます。どうか、このギフトが貴女を支えてくれますように…」

「フォルティナ様………」


優しい女神様だなぁ。


……正直、まだ帰りたい気持ちは強いけど…このギフトで何とか頑張りますよ。



「さぁ、もう起きる時間ですよ………」


あれ、なんだか女神様の声が遠くに………。









「んぁ?」


そうして、眠ってからさほど時間が経っていない部屋の中で目が覚めたのだった。


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