もう思い出にしか
割り切るしかないんです。
でも、方法を探すことは出来るんです。
例え、期待外れでも。
「っはぁ〜。なんか、疲れたな」
ところ変わって、とある部屋。
あれからメイドさんに案内してもらって、私専用の部屋だという所に案内された。
つるりとした白い石の床に毛の長い絨毯。
天蓋付きのベッドにオシャンティーな家具。
なんだかすっごく可愛い部屋に通された。
いや、部屋間違えてません?
って思った。
間違えてないらしい。
マジかよ。
「………いや、可愛いのは嬉しいけども」
実は結構可愛いのは好きだ。
だけども、可愛いと豪華絢爛は違う。
違うよ、可愛いけど豪華絢爛よりだよこの部屋。
「…部屋あるだけありがたい。うん、ちょっと自分が場違いすぎだと思うだけで文句は言わん。うん」
しかも、言う機会がなかったが今まで裸足だった。
それを!「裸足で歩かせてしまい申し訳ありません。御御足を拭かせていただきます」って!メイドさんが!!靴まで用意してくれるって!!!しかもオーダーメイド!!!
私は!!何様だー!!!
「………なんか、やばいな」
もうこれは挙動不審になるレベルで申し訳無さすぎる。
至れり尽くせり、どこのお姫様だよ。
そんなこんなでベッドの上である。
少し休憩をとって、夕食の後に魔力検査だってさ。
って言うか、もう夕方だったんだね。
そもそも、何時くらいにここ来たのか分からないから「もう」なのか、「まだ」なのか分からないけれど。
「ここの時間とか、日付とかどうなってんだろ。流石に地球と同じじゃ無いだろうしなー」
ダメだ、考える事すら疲れた。
そうだよなー、いきなり異世界だもんなー。
「………帰れないかもしれない、かぁ」
『聖女様』『救ってください』『聖女様』。
そんな事考えた事なかったよ。
いやーん、聖女だってさ。
こんなガサツだし、ズボラな私が『聖女様』!
ただの一般人から大昇格だぜ。
なんてね。
あのコンクリートの森が、ワンルームで手狭ながら居心地のよかった我が家が。
こだわって時間と金を掛けて集めた家具が、手に入って嬉しくて小躍りした趣味のグッズが。
気の知れた仲のいい友達が、遠慮なくバカ騒ぎし合える兄弟が。
大変ながらも楽しかった仕事が。
気付けば、一瞬のうちに辿り着けないぐらい遠くなってしまった。
なんて。
「寂しいなぁ。………帰れないのかなぁ」
ダメだなぁ。
何もする事ないと、暗い考えになっちゃうなぁ。
自分の震える声なんて、聞きたくもないのになぁ。
「ははっ。夕日、………眩しいんだよ。くそっ……!」
日当たりのいい部屋宛がってくれやがって。
直撃じゃねぇか。
だから。
目が熱いのは、夕日が赤くて眩しいせいだ。