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魔法少女は猫から生まれる  作者: 畔木鴎
一章『便りのないのは良い便り』
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二節『雨の中と傘の中』2

 三月 二十四日 金曜日 雨


 雨の中で私は立っていた。

 こんな日に公園に来るもの好きが居るわけでもなく、私一人だけが足元に漂う薄霧を眺めて気ままに歩いく。

 特に用事があったわけでもなければ、急に思い立ってフラフラ歩いていたわけでもない。言葉にはしにくいけど、心を空っぽにして歩いてきたつもりだった。


 特にこの場所に思い入れがあるわけでもないのに、何かを探すかのように周囲を見渡すのは何故だろう。

 こうして外にフラッと出るたびに何かを探して、心に櫛を梳いていく。私自身、良くないことだとは分かっていても、こうして毎日の中に癒しを求めるように歩き回ることはやめられなかった。


 目に付くのはそれこそ虫だったりと言った小さな生き物で、日々の鬱憤が指先に集約されているかのように、残酷に動くのだ。

 今日は見つけたのが猫で、そいつが死にかけだったというだけ。その様を見ようと、私は歩いていた。


 狩りが圧倒的に下手なのかな。


 そう考えずにはいられない。勝手なイメージだと、そんな推測しか出ないが、雨の中を歩いている猫なんてそんなものだろう。


 私に向かってか細く鳴かれたって食べ物は何も無いし、救う気もない。うちのマンションはペット禁止だ。そもそも、あまり触ろうとは思わない。雨に濡れ、泥を吸った毛は汚かった。


 ああ、今この時だけは誰かの悪口を言っても許されるような気がするのだ。

 毎日のくだらない愚痴や、暴言。そんなふとした怒りを言葉にするよりも、何かの死を見て安堵する方が良いとは言わないけれど、勝手にの垂れ死ぬのなら早い方がいいなぁと、ほのかに期待していたかった。




 有り体に言って私の精神はクズよりで、これから起こる事を知っていたら、この公園には来なかったろう。

 白猫は私に力を与えて、醜く溺れていく様を見たかったのだろうか。次会うことがあるのなら、今度ははっきりと聞かせてもらおう。

 全てが始まった雨の日の様に、彼を見下ろしながら。

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