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魔法少女は猫から生まれる  作者: 畔木鴎
二章『心を以って心に伝う』
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二節『能力者の生まれ方』1

 数分後、一度リースさんが顔を見せたかと思うと、そこに詰めていたであろう人たちがまばらに外に出てきた。それぞれが何気ない日常を演出しながら徒歩や自転車で何処かに向かって行くのはいっそお気楽にも見えた。

 俺と明菜が身を潜める車に向かってくるのは、グラサンにマスクをした明らかに怪しい人物と、レコさんだ。


「お邪魔します」と、ドアをスライドさせて乗り込んできた不審者は南雲の拠点で戦闘した時にも居た炎使いの能力者である。こんなに不気味な格好をするような人ではなかったのだが、その理由は運転席に戻ったレコさんがしてくれた。


「フレアちゃんもナル君と一緒で今日の朝散々だったんだよ」

「ナルさんも狙われたんですか?」


 キーを回してからシートベルトをつけ始めたレコさんを見ながら、俺は炎の能力者、フレアに言葉を返す。


「まぁ。だいぶギリギリだったけどどうにか。フレアは大丈夫そうで何よりだよ」

「あたしのところは弱い能力者というか、見たことない人の虚仮威こけおどしに付き合ってたというか」

「見たことないって初心者でもあるまいし」


 南雲は人手が足りないから葉山さんに協力を持ちかけたのだろうか。もしそれが本当なら滑稽なことこの上ないが。

「いや、あれはもう初心者と呼んでも……」とため息をついてサングラスを外した彼女に「おつかれ」と返したところで車が動き出した。


 レコさんにどこに向かうのかと聞けば、俺たちの支援者の土地に行くのだとか。

 支援者と言ってもただの裕福な一般人でしかないが、俺たちみたいな存在が表に出てこない方が都合が良い人も居る。そこはちょろっとボヤ騒ぎでも起こしてやれば対価になるし、不慮の事故が起こる可能性もゼロということは決して無い。俺たちに出来るのは妖精のようにちゃちな悪戯だ。

 互いにあまり関わりたい存在ではないが、有事になればこうして頼る事が出来る。都合のいいパートナーだった。


「リースさんに葉山さんの話も一応言いましたから、彼もどこかで合流するかもしれません」

「赤城さんも来ますし、これで逆転出来るかもしないな」

「赤城さんってどんな人ですか?派閥の名前にもありますけど」

「あ、実はあたしも会ったことないかも」


 明菜は当たり前だとして、フレアは今年で十八歳。比較的最近入ってきた彼女なら、赤城さんの事を知らなくても当然だろう。

 ただ、俺は彼のことを上手く言葉に出来る自信がなかった。不思議な人ではあるのだが、その一言で終わらせてしまうのは二人に不親切だし、かと言ってそれ以外の言葉を探すのも難しい。その人の特徴とも言える能力ですら、完全に理解出来るものではなかった。


「なんというか、一言で言うなら凄い、かな。会わないと分からないと思うけど、絶対的な何かを持ってるような、そんな感じがする。能力は何と言えばいいか……きっと上書きだとか、創造だとかが妥当だろうけど」

「そんな能力者が居るんですか」

「あの人は自分のことを最初の能力者だって言うけど、それも納得させられるような凄みがね」


 最初の能力者というだけあって赤城さんの容姿は爺だが、どうにも年齢の計算が合わないのも彼を語る上で必要な情報だろう。

 リースさんの両親は能力者だったと言う話を聞いた事がある。今の彼女が二十代後半だから、その両親は生きていれば五十以上がほぼ確定する。もちろん、彼女の両親を知る能力者の記録も読んだ限りでは赤城さんは余裕で八十を超えているわけだが……、いいや、実際に見てもらったほうがいいか。

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