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2話 魔法少女系ヒーロー

魔法少女系(嘘は言ってない)

授業が終わって皆が課外活動に励もうとする頃、帰宅部である男子高校生2人組は教室で帰りの支度をしながら喋っていた。


「今日も授業終わったー。抜き打ちテストはまじで勘弁してほしい」


「出来た?」


「もちろん、あんまり出来なかったぜ!」


「だろうね」


「『だろうね』ってなんだよ!そこは慰めてくれよ」


キョウスケは中々面倒くさそうな性格をしている。

そうこうしている内に、帰りの支度が終わったようだ。カバンを背負い、彼らは教室を出て校門の方へ向かって行く。


「そういえば知ってる?ワルグリーンに余罪が見つかって再逮捕らしいよ」


「まだ何かやってたんか」


「違法薬物所持だって」


「だろうな!」


そうぐだぐだと話している内に、どこからから女性の叫び声が聞こえてきた。


「きゃあっ!」


「おい!叫び声が聞こえてきたぞ!」


「向こうの方だね。行こう」


彼らは女性の様子を見に行く為に体育館の中へ入ると、倒れている女子生徒を発見した。


「大丈夫か!?」


彼らが駆け寄ると、不気味な笑い声と共に物陰から何かが出てきた。


「ゴーキゴキゴキ」


「誰だ!」


「私は怪人ゴキブリ男。目撃されたからにはただじゃ帰せないよぉ」


「自分から出て来てるのに」


「しかも来てる服がダセェっ!」


キョウスケがそう思うのも当然である。

なぜならば、怪人ゴキブリ男は茶色の全身タイツを身に付け、ゴキブリの被り物をしているだけであるからだ。


「何を言う!これはゴキブリ男の間での正装なのだぞ!」


「正装ダサッ!しかもゴキブリ男は何人もいるのかよ!」


「ワルワルワールズのサイト『日本ゴキブリ男の会』によると37人いるらしいね」


「またワルワルワールズかよ!」


しかも人数が微妙である。


「目的の人物も現れなかったし、君たちには僕の仲間になって貰うよぉ」


そう言って怪人は彼らに歩み寄って行く。

その時である。


「そこまでだ」


突如として、ツナギを着た40代くらいの男が現れた。


「誰だい君はぁ」


「私は狭間源一郎。通りすがりの用務員さんだ」


「用務員さん!逃げてくれ!」


キョウスケが必死に呼び掛けるが、用務員はソコから退かずにゴキブリ男を睨み付けている。


「用務員かぁ。一体、君みたいなおじさんに何が出来るのかなぁ」


「おじさんに出来る事はただ1つ。未来のある彼らを守る事だけだ」


彼は静かに、しかし確固たる意思を携えながらこう答えた。


「よ、用務員さんっ!めっちゃ格好いいぜっ!」


「ゴーキゴキゴキ。ただの人間にこの私が倒されるとでも思っているのかい?」


その問いかけには答えず、おもむろに用務員はポケットからファンシーなピンク色のステッキを取り出した。


「何っ!まさか貴様はっ!」


「変身」


そう言うと、彼の体の周りはまばゆい光で覆われた。そして中から出てきたのは、ゴスロリ衣装に身をつつんだ1人のおじさんだった。


「魔法おじさん『OG3』のリーダー、マジカル☆用務員。未来のある若者達の行く末を守る者だ」


「マジカル☆用務員ってなんだよ!ていうかそもそも魔法おじさんってなんだよ!さっきの感動返せよ!」


「何!貴様があの魔法おじさんか!目的の物は見つからなかったが、貴様を倒せばボスから報酬を貰える!貴様には死んでもらおう!」


「魔法おじさん有名なのかよ!?」


「それにしても絵面がヤバい」


※全身茶色タイツの男と魔法少女のようなゴスロリを着たおじさんがいます。


「喰らえッ!ゴキブリのスピードと頑丈さを生かした攻撃ッ!ゴキブリクラッシュッ!」


※ただのパンチです。


「グハアッ!」


「用務員さん!」


「ゴーキゴキゴキ。その程度かなぁマジカル☆用務員さぁん」


まるで松ヤニの様に粘っこく、いやらしく話すゴキブリ男。被り物をかぶっているので詳しくは分からないが、その顔にはおそらく余裕の笑みを浮かべているだろう。


「くっ!これは使わざるを得ないか!」


そう言うと彼はその手に持っているステッキを天高く掲げる。そのステッキは優しい光を帯びていた。


「あつまれ!マジカルおじさんパワー!」


「マジカルおじさんパワーってなんだよ」


「マジカルおじさんパワー、通称MOPは全国のおじさんの元気を少しずつ集めたものらしいよ」


「だからおじさん達はいつも疲れているのか!」


きっとそうに違いない。決して歳のせいではないのだ。


「MOP解放!召喚、マジカル☆殺虫剤!」


そうこうしている内にどうやら武器が召喚されたようだ。その手にはいつの間にかスプレー缶が握られている。


「マジカル☆殺虫剤ってなんだよ!そこはもっと強そうな武器にしろよ!しかもMOP浸透してるのかよ」


「ゴキブリに対しては強いかもしれないけど」


ちなみに作者にもマジカルな殺虫剤が何なのかはわからない。


「喰らえ!ゴキブリ男!」


マジカル☆用務員はその殺虫剤を彼に放つ。


「ゴキィィィィッ!馬鹿な!このゴキブリ男が破れるだと!」


どうやらマジカルな殺虫剤なら怪人には効くらしい。ゴキブリ男は悲痛な声をあげて地に伏せる。


「君の敗因はただ1つ。彼らの未来を奪おうとした事だよ」


「その格好で言われても」


シュウゥゥゥ


マジカルな殺虫剤のおかげなのか、ゴキブリ男のその体は霧散していった。

そしておもむろに彼は優しく微笑みながら、高校生2人組に話し掛ける。


「君たち、大丈夫だったかい?」


「あっ!大丈夫っす!」


「そうか。それじゃあ私には仕事があるからもう行くね。次からは気を付けるんだよ」


そう言ってマジカル☆用務員は校舎の中へ戻っていった。


「なんかカッコよかったよな」


「キョースケにはあんな趣味があるの?」


女装そっちじゃねーよ」


「それにしてもあの格好のまま校舎に行ったけど大丈夫かな?」


「あっ」


その後、マジカル☆用務員はどうなったのかは誰も知らない。

ちなみに、女子生徒の叫び声とパトカーの音が辺り一面に鳴り響いたとか。



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