◇プロローグ◇~マスター編~
「マスター?制服どこにあるか知ってるー?」
愛麗さんは、慌てる様子もなく私に呑気に問いかけてくる。
「高校生活初日だって言うのに貴女様は......そこのハンガーに掛かっているじゃありませんか。」
「本当だ!ありがとうマスター!」
部屋を掃除しながら、時計を確認する。
もう8時はないか。愛麗さんの登校時刻だ。
「愛麗さん、もう8時ですよ!登校の時間ですよ!」
「行ってきまーす!」
「行ってらっしゃいませ。」
私は愛麗さんの声に優しく返した。
私は愛麗さんにマスターと呼ばれている。
いや、呼ばせている。
愛麗さんには"魔術"が使える。
そう、愛麗さんは魔法少女なのだ。
13年前、私は魔力を持った小さな少女を見つけた。
魔術を使える者には人間には見えない、
"アンビアンス"と呼ばれる独特なオーラのような物を放つ。
その幼き少女はアンビアンスがかなり強く感じられた。
この少女は将来凄い魔法少女になる。
そう思った私は、少女と両親が別々になったタイミングを見つけ、
少女を捕まえた。
その少女の記憶と、その子の両親の記憶は全て消した。
その少女というのが、後の愛麗さんだ。
なぜ、私がアンビアンスを見れているかって?
私は死神だからだ。
死神もまた、魔術を使うことが出来る。
愛麗さんにはこの事は言っていない。
私はトップ魔法使いだと伝えている。
なぜそんな嘘をついているかというと、
愛麗さんの類い希なる魔術を利用し、愛麗を最強の死神にするからだ。
私の目論見通り、成長させるために、
様々な事を愛麗さんにしている。
勉強に集中させ、その間に魔力増強液を注入させたり、
真の両親へ罪悪感を生ませたり、
そして、私に敬意を払うようにしたり。
その為に私は偽善者になっている。
優しく振舞い、愛麗さんを最強の死神に育てる。
これが、私、総死神のやることだ。
愛麗さんが最強の死神になるのも時間の問題。
愛麗さんが創成死神になるのは
すぐだ。