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私は大人しくいじめを受けていた。
……いや、いじめなんかじゃない。だって自分で“自分がいじめられてる”なんて言うなんてそんなの嫌だ。私はそんなに弱くない。いじめられてるなんて悲劇のヒロインが言うことだ。私は悲劇のヒロインなんかじゃない。そんなに弱い人間じゃない。
私は……ちょっとだけゲームの悪役を演じてるだけだ。
私は悪い人間。スーパーマリオで例えるとクッパ大王みたいな?
それでみんながマリオ。この世の平和を守るために悪役を倒しているの。みんながヒーローなの。
あれ?でもおかしい……普通ヒーローは一人じゃないのか?なのにこのクラスには一人の敵に対してマリオが34人もいる……変だ。
でも、まあいっか……
でも……これも変。これでも私は勝手に悲劇のヒロインになってる。ていうより、“被害妄想”だ。「私は敵になってる」なんて、ただの被害妄想。
私は被害妄想するような弱い人間じゃない。私はとりあえず弱い人間にはなりたくなかった。
でも、今私は全部をネガティブに考えてしまっていて……だから弱い人間でしかない。
ポジティブに物事を考えることができない。
もうわけがわからないよ……
強くありたい。ポジティブに生きたい。なのにポジティブに物事を考えられない。
辛い。なんで強くなりたいのに強くなれないの?
強くなりたい。なのに……
私の心はずーっと同じことしか思えない。同じ思いだけが私の胸を壊そうとする。
なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?
なんで強く生きれないんだよ!
なんで私強くなれないんだよ!
なんでこんなに弱いんだよ!
なんでなんだよ!!!
私……なんでこんなに弱いの?
誰か私を救って。
私の心を強くして。
誰でもいいから!
強く生きさせて。
強くならせて。
ビュー……
風が吹く。
足元がふらっとなった。涙が零れる。一粒だけ。
あとはもう泣かない。一粒の涙しか零さない。強くなるために、そう決めた。
学校の屋上。今日は学校が休み。部活をやってる人も誰もいない。
二粒目の涙が零れそうなった。
だから私は心を決めた。
涙が零れぬうちに……
飛び降りた。
―――ピーポーピーポーピーポー
薄れ行く意識の中で救急車の音だけが聞こえていた。
やっと死ぬんだ。
強くなったんだ。
私の度胸を認めてほしいな、誰かに。