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リアルゲーム  作者: 心望
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6

「きゃ!!!」

教室に入るなり私に水が降ってきた。

私の戦いはもう既にはじまっていた。


「おっはよー♪サユ」

クラスのみんなに歓迎されていたサユは戸惑いを隠せずにいるようだった。

だって今日から突然サユはいじめられなくなったのだから。

私はサユのほうを見つめていた。サユの変わりに、サユの身代わりとなって今日から私がいじめられる。そう思うと、サユを憎まずにはいられなかった。

サユと目が合った。それでも私はすぐ目をらす。サユは私のことを不思議そうに見ていた。一人ぽっちでいる私を。



私の教科書とジャージは即ぼろぼろにされた。

“死ね”“キモイ”“臭い”

落書きだらけになった。

そのうちにサユも私の敵になった。当たり前だ。だって私もサユをいじめてたんだから。仕返しされるのは当たり前。



いじめられると、とにかく困る。教科書とジャージはぼろぼろになるから買わなければいけない。もちろん買うのにはお金がかかる。だからお小遣いの減りがはやくなる。

お母さんに聞かれた。

「あんた最近お小遣いの減りがはやいんじゃないの?」って。言い訳に困った。なんて言おう……教科書を買ってるなんて言えない。だから私はこう言った。

「最近友達と遊びに行くのが多くて。ごめんね。これからは気をつける」

元々私はこんな素直な子じゃないから、お母さんは不思議に思っている様子だった。


買っても買っても買っても汚される教科書とジャージ。汚される度に買ってたのではお小遣いが間に合わない。

お母さんにはなにも心配かけたくないし。だからお小遣いがある程度貯まるまではぼろぼろの教科書で授業を受けた。

体育がある日は、授業を休んだ。



いじめを受けると教科書を買いに行かない日はとにかく暇だ。休みの日は受験勉強に集中する。

でも、普段の授業には集中できない。だって教科書がぼろぼろの時があるから。その時はまるで授業に集中できないから勉強に着いていけない。授業をサボることも多々あったから先生の評判は悪くなった。

給食には墨汁を入れられるから食べられない。


それでも私は傷つかなかった。

過去に経験したハブゲーム。あれはたった一日ハブになるだけだった。

今私が受けている“コレ”も、ほんの数日で終わる。もう少しで終わるんだ。中学を卒業すれば終わるんだ。そう思うと心強くなり、傷つくことなく乗り切れた。



「ただいま」私が家に帰ると弟がテレビゲームをしていた。

「死ね!!死ね!!」テレビゲームの中の悪者に向かって“死ね”を連呼していた。

私はテレビゲームの線を抜いた。

「ちょっと姉ちゃんなにすんだよ!!!死ね」

弟に怒られた。そして弟はお母さんに怒られた。お姉ちゃんにそんなこと言うんじゃありません!と。

「私テレビ見たいの」嘘だった。けれど仕方なくお笑い番組を見た。

実につまらない。前まで大好きだったお笑いコンビなのに今はもう大嫌い。ネタが変わってしまったわけでもないけど、なぜか嫌いになってしまった。

そのコンビのツッコミのほうが、ボケのほうに「おまえ顔気持ちわりーよ」と言っていた。

その瞬間私は思わずテレビを消した。ツッコミの人は“キモイ”を連呼していたから。


「なんだよ姉ちゃんコレ見たかったんじゃねーのかよ!」

「やっぱいいや。つまんないから」


そこにお父さんが酔っ払って帰ってきた。

「ただいまー」

「うわっお父さん臭っ」お母さんがお父さんに向かって“臭い”を連呼していた。


「ねぇ、お母さん私ご飯いらないや」

「具合でも悪いの?」

「ちょっとね。部屋で横になってくる」


そう言うと私は制服のままベッドに潜り込み、窓から見える細い月を見ながら

泣いていた。

悲しくなんかないのに、なんでだろう……

涙が止まらない。世の中には汚れた言葉があふれかえっている。そう思うと、

悲しくなんかないはずなのに、涙が止まらない。

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