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次の日、サユは学校に来た。トボトボと、元気が無い足取りで。
私はサユに話しかけられた。
「おはよう」と。
でも私はシカトした。昨日のみんなとの約束どおり……
―――昨日の放課後、サユと先生が立ち去った後。
「罰与えるって、どうやって?」
「“罰ゲーム”だよ」
「なに…するの……?」
「これやろッッ」
すると、ひとりの女子が一冊の漫画を取り出した。今女子中高生で流行ってるいじめをテーマにした漫画だ。
その漫画にはとてつもなく残酷にいじめの様子が描かれていた。目を瞑りたくなるようなひどいいじめの様子が。作者自身が昔、いじめを経験してるからこんなにリアルに描かれているのだという。
「こういうことさ、サユにもやろうよ」
「あたし賛成!!!」
「あたしも!」
そしてみんなが手を挙げた。私は賛成じゃなかった。“いじめ”で罰を下すなんて間違ってる。それでも私の意見なんて誰も聞いてくれない。
この漫画の作者はきっと「世界からいじめがなくなってほしい」という思いで漫画を描いたのだろう。それなのに、それが本物の“いじめ”に利用されるなんて……。いじめがなくなってほしいという思いで描いた漫画がいじめのガイドブックになるなんて、作者は思ってもいないだろう。悲しい。
いじめは、その漫画通りに行っていった。
まずはシカト。全員でシカトする。
そしてサユは元気が無くなった。
みんながサユを睨み、笑う。
私は耐えられなくなった。そんなサユの姿を……そんな親友の姿を、見ていられなくて、女子トイレに逃げ込んだ。
そして……ひとりで泣いた。
サユの私物は日に日にぼろぼろになっていった。教科書や鞄には大量の落書き。私も書いた。
――裏切り者――と。
こんなこと間違ってる。とは思いつつも、でも周りには逆らえず書いてしまった。
でもみんな本気ではない。誰も「死ね」と書いたからといって、本気でサユが死ぬなんて思ってない。これはゲームの延長上の“罰ゲーム”なのだ。
ルールを破った者に下される“罰”だった。誰もゲームで人が死ぬなんて思わない。いじめを受ける本人の気持ちは誰も理解していなかった。
でも、私は知っていた。サユが放課後女子トイレの一番端の個室で嘔吐していることを……