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リアルゲーム  作者: 心望
3/17

3

 ハブゲームは意外に楽しかった。反対してた私も結構楽しんだ。でも楽しんでることに罪悪感を感じることもあった。

 ある日、私もくじ引きでハズレを引き、ハブになった。

ハブになった日は結構辛かったがそれでも「明日には元通り」と思うと、その日はなんとか乗り切れた。

 ハブになるとみんなが敵に見えてくる。サユまでも私をハブにするのだから怖い。誰も話を聞いてくれないから休み時間と給食時間は特に辛い。本当に辛い。でも我慢する。我慢しなければならない。ルールがあるから。ゲームのルールを破ってはいけない。それくらい私だって知ってるから、ひたすら我慢を続ける。明日への希望をもって。


 

 次の日。普通にみんなが私と話してくれるようになった。ハブゲームは本当に一日だけなのだ。そして、朝みんなが集合するとくじ引きをする。目をつぶり神に祈る思いでくじを引く。

“ハブにはなりませんように”

みんながそう言っているようだった。声には誰も出さないが、ハブになりたくない思いがみんなから伝わってきた。

 そしてその日のハブは……サユになった。

「サユどんまーい。んじゃスタート」

その掛け声でサユはハブになった。みんなサユをシカトする。サユは一人ぽっちになった。

かわいそうだな。とは思ったけど、仕方ない。コレがゲーム。こういうゲームなんだから。

「頑張ってね」

私はこっそりとサユに声をかけて、私もゲームに混ざった。



 その日の放課後……なぜか私たちはみんな教室に残された。

「なんで?」「あたし勉強したいんだけど」「残されるとかまじ迷惑」

みんな塾がある。みんな忙しいのだ。みんな勉強しなければならない。だからイライラしていた。


そして私はサユがいないことに気づいた。

「ねぇサユいなくない?」

私は周りの友達に聞いた。

「まじだ…いない。どこ行ったんだろうね?」


するとそこに……先生が入ってきた。

―――サユと共に。


「ちょっとサユ!なにやってんの?」私は思わず叫んだ。でもサユはこっちを見向きもしない。


「みんなよく聞いて!!!」先生が叫ぶ。

周りは妙な空気に包まれる。分けがわからなかった。なんで先生がこんなに怒っているのか、なんでサユが先生とくっついているのか。そして先生が話をはじめた。


「私、久野(←サユのことである)さんから報告を受けたの。いじめられてると。これは本当なの?このクラスにはいじめがあるの?」


サユは、先生にチクった。

周りがざわつく。先生がまたキレル。

「静かにしなさい!!みんな目を瞑って」

先生は犯人探しをはじめた。でも誰もいじめなんてやっていない。犯人なんていない。これはゲームなのだ。

「いじめをしてます。してました。っていう人は手をあげなさい」


誰もあげるはずがない。だって、本当に誰もいじめなんてしていないのだから。ただの“ゲーム”をしていただけなのだから。


「わかりました。それがあなた達の思いなのね?誰も手をあげなかったわ。やったのにやっていないと言う。汚い人たちなのね?みんなは」

先生の言葉に私もついにいかった。その怒りを口には出さなかったが、だって本当に誰もいじめなんてしていないのに……

「久野さんはとても傷ついたんです。久野さんのご家庭と相談して今後久野さんがどうするか、決めたいと思います。みなさんとはまた今度しっかりお話をしたいと思います」

先生はそう言い、サユと共に立ち去った。



「ねぇ……サユ、チクったんだよね?」

「まじ許せない」

「これはゲームだって、サユも知ってるくせに」

「アタシ、このゲームでサユにもハブられたよ」

「なんであんなこと…」

「サユ明日から学校来ると思う?」

「知らないよ!でももし学校に来たらそれなりの罰を与えなきゃね」

「ルール違反したんだから」


みんなサユにムカついていた。私はサユにもムカついていた。

ルール違反者にはそれなりの罰が下る。これは社会の常識だ。

だからサユにもそれなりの“罰”が下るのだ。

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