15
私は、部屋のカーテンを開いてみた。
外はもう暗く、細い月が時々雲に隠れながらも懸命に光っていた。
東京の星は少ないというけれど、今日はなんだかいつもより星がきらきらしているように見えた。
――アカリはあそこにいるのかな?――
目立ちはしないけれどそれでも優しい光を放っている星を見つけた。なんとなくアカリに似ている気がした。あれがアカリ。アカリを見てると涙が出てきそうになった。だけど必死に上向いて涙が零れないようにした。だって、アカリは優しい子だから私が泣いているのは自分のせいだ。って思っちゃうかもしれない。自分で自分を責めちゃうかもしれない。だから涙は流さない。少なくともアカリが煌く夜は泣かない。
だけど……。やっぱ悲しいよ。もっともっとアカリと思い出作りたかった。もっともっとプリクラ撮りたかったし、駅前のお店のジャンボパフェも食べたかった。二人で高校合格を喜びたかった。お互い彼氏作って、Wデートもしたかった。二人で旅行とかもしたかったね。もっと笑いたかった。ずっと二人でいたかった。なのに……。なんで?なんで先に逝っちゃうの?どうして私をひとりにするの?ひとりはやだよ。ひとりは寂しいよ。ねえアカリ!置いてかないでよ!私これからどうすればいいの?誰とお弁当食べればいいの?誰に勉強教えてもらえばいいの?学校や家で辛くなったとき誰に電話すればいいの?私今気づいたけど、友達アカリしかいなかったんだよ?アカリがいなくなったら私本当にひとりぽっちじゃん!どうすればいいの?
いつも二人だったから「寂しい」なんて感覚感じたことなかった。「寂しい」なんて感覚忘れてた。でもアカリがいなくなったって改めて思うとあの頃の、ひとりぽっちだった頃の記憶が蘇ってきた。
思わずカーテンを閉めてアカリと目を合わせないようにして、泣いた。
ひとりになるんだってことに改めて気づいて、泣いた。声を出さないように、静かに、静かに泣いた。
コンコンッ
ドアをノックする音が聞こえた。涙を拭いて鼻をすすって「はい」って涙声にならないように返事をした。
「ミキ、入るわよ?」
ガチャ、とドアが開いた。ほんのりカレーの香りがする。
「はい、カレー。ミキ今下に降りる気になれないでしょ?」
「……うん」
お母さんは私が今まで泣いていたことに気づいていたのかな?いつもと変わらない笑顔で私に話しかけてくれる。さっきとても強くお母さんを打ったのに、そんなこと気にしない様子で……。
机にお盆を置く音が聞こえた。
「じゃあ後でお皿取りに来るから」
そう言って部屋を出ようとしたお母さんを、私は思わず引きとめた。
「待って」
「え?」
「ココに……いて。ひとりになるのが……怖いの」
―――すると、
ほわっとお母さんの暖かい匂いがした。そして全身が暖かい温もりに包まれた。
お母さんが、私を抱きしめてくれた。
「お母さん……。」
……涙が一粒零れた。