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「なに?」
私はクラスの女子4人に鋭い眼つきで問いかける。
「あんたさ、なんなの?アカリの事手伝ったりなんかしちゃってさ」
「別にいいでしょ?私がなにしたって勝手じゃん」
私はあくまでも落ち着いて、そして堂々とした態度で姿勢を構える。
「まじうざい。超うざすぎ。あんたの事もやっちゃうよ?」
ここでの「やる」とは多分「いじめをする」ってことだと思う。
「……勝手にすれば?もうあんたらなんか怖くないから」
事実、私はもういじめなんか怖くない。慣れたから。いじめなんか、慣れたから。
慣れたから……慣れたから……。
「あっそ。んじゃ、アカリと一緒にオマエも死ね」
立ち去る4人の背中を私はきっと鰐のような鋭い目で見つめていたはず。
そして、その目からは……なぜか知らないけど、涙が零れ落ちた。
次の日から私はずっとアカリと一緒にいた。
私はアカリを守ろうと決めたんだ。酷いいじめからアカリを救ってあげるの。
まあ私もいじめを受けているけど、でも……私はいじめなんかじゃ傷つかないから。傷つかないはずだから……耐えられる。
てか、アカリの事を守るために耐えなきゃいけないの。私なんかに「守る!」って言われたからといってアカリは心強くなんかならないと思うけど。それでも、決めたから。守らなきゃいけないから……
アカリは毎日のように酷いことをされていた。
アカリの前髪がなくなり、それと同時に私の前髪もなくなる。
アカリの教科書が汚され、それと同時に私の教科書も汚される。
アカリの机に菊の花が置かれ、それと同時に私の机にも菊が花が置かれる。
私とアカリはいつも同じ時所にいて、同じことをされて過ごした。
そしてある日私達は学校にあるごみ倉庫に閉じ込められた。
埃が舞い、嘔吐物の臭いがし、いるだけで身体に悪いような場所だった。
そんな場所で長い間沈黙が続いて……アカリは私にこう囁いた。
「……あんたさ、迷惑。はっきり言って邪魔だから。あんたのやってることはただのお節介だよ。前も言ったけど……どうせ裏切るんだったら、優しくなんかしないでよ!」
って。はっきり言ってコレはかなり傷つく言葉だった。
でも、仕方ないよね。アカリは今人が信じられなくなっているんだから。
いじめのせいで、人が変わっちゃってるんだから。いじめは人を変える……恐ろしいものだ。
「……ごめんね。お節介で。だけどね、私は絶対アカリを裏切らないから。私はアカリが大好きだから。嘘はつかないよ?絶対に。信じて。お願い。アカリ?大好き」
そして私はアカリを抱きしめた。強く、強く抱きしめた。
「……信じない」
アカリは涙声で私にそう言った。二人でずっと泣いていた。
そしてその日、掃除当番によってごみ倉庫の鍵が開かれるまで、
ずっと二人で泣いていた。