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サユはその後転校した。北海道にある中学校に。
サユのお父さんの仕事の都合で前々から転校する予定ではいたらしいのだが、サユのわがままで少しの間だけ引越しを先延ばしにしてもらっていたらしい。
でも先日、サユが転校してもいい。とお父さんに話したため、4日前サユは飛行機で北海道へと向かったみたい。
会うと悲しくなる。だから私は見送りには行かなかった。そして今日、サユから手紙が来た。
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To:Miki
ミキ、ありがと。そしてゴメンね。
私あの時ミキを殴って思った。コソコソしたいじめなんかで仕返しはできない。
心にあったミキに対しての恨みとか、憎しみとか、そういうの全部いじめなんかじゃ
解決できないんだよ。ミキを殴って、それを思い知ったの。
いじめなんかで、私の心が晴れることはなかったんだと思う。
いじめなんか、無意味だったの。
正々堂々面と向かって痛みを与えて「私も今までこんなに痛かったんだぞ」って
面と向かって知らせてあげないと、自分の心はずっとモヤモヤなままなんだよね。
いじめで仕返ししたって、全くスッキリしない。
それをミキに教えてもらった。
今ならもうミキを許せる。他の奴らはまだ許せないけど。それでももう忘れる!
もう絶対いじめなんかしない。
ミキは私の親友だよ?私をもう一度笑わせてくれたただ一人の親友。
離れてても、信じてる。
頑張ってね。すごく辛いと思うけど。でもミキには親友がいるんだから。
私っていう、頼りないバカみたいな親友がいるんだからね。
お互い頑張ろ!
私もこっちの学校で頑張るね。
From:Sayu
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私はその手紙を読みながら……涙を流していた。
私に親友ができた。
たった一人の、大事な親友。
サユは今頃どうしてるかな?新しい学校で頑張ってるのかな?
サユが頑張ってるなら、私も頑張らなくちゃ。
いってきーす。
家中にそう響かせて、私も今、戦場に旅たつ。
戦場=学校に着くと、いつもと様子が違う。
私の上靴がちゃんときれいなまま下駄箱に入っているのだ。
いつもならばグチャグチャにされているのに……。
おかしいな?と思いながら教室に入ると、私は一人の女子に声をかけられた。
「おはよ」って。
私はビックリした。思わず「おはよ」って返すのを忘れた。
でも、私はある事に気づいた。
そう。本日付で、私はターゲットから外されたのだ。
そして、同じクラスのアカリがみんなからシカトされていた。たぶんみんなの気まぐれだろう。
ターゲットが変わるのに理由なんてないんだ。ただの気分。
アカリはクラス一小さい女の子。笑顔がとても可愛くて、妹みたいな存在。
いじめなんかに参加するようなタイプじゃないけど、たぶんアカリは周りの人に巻き込まれて私やサユにあんなことしていたんだと思う。そんなアカリが今度のターゲットだ。
一人の女子が噛んでいたガムをアカリに吐きつけた。
「……ひどい。なんで?昨日まで私達仲良かったじゃん」
アカリは泣きながら訴えてた。アカリの傍にあった机とか椅子とか、全部倒してアカリは女子の集団へと向かっていった。
「ねえ、なんでなの……?」
アカリの涙は、とても激しく。とまることをしらない勢いで流れていた。
「今なんか聞こえたー?」
「わかんなーい」
「空耳かなー。まじ耳元うざいし」
「きもーい!なんかいるんじゃね?」
「うわっきも」
みんなはそう言いアカリを相手にしなかった。
そしてその女子たちはアカリの机に……生卵を割っていた。
きれいな黄色い黄身がちょうど机の真ん中にある。ゆらゆらとアカリを嘲笑うかのように黄身がゆれている。
アカリは吐きつけられたガムを指でつまみ、そして口に含み、まずそうな顔をして喉元を通した後で、雑巾を持ち机を拭き始めた。
アカリの目からこぼれる涙、鼻からこぼれる鼻水が白身と混ざり、もはやなんの液体かわからない透明の液が机の端からこぼれ始めていた。
みんなアカリを見つめ、そして笑う。冷たく、冷たく笑う。
私は見ていられなかった。そんなアカリを。
私も雑巾を持って机や床を拭いた。
すると……小声でアカリが私にこう言った。
「どうせあんたも後で私を裏切るんでしょ?だったら優しくなんかしないで」
と……。
アカリは、人が信じられなくなっていた。
そして私は、アカリに信じられてはいないみたいだ。
そしてその日の放課後、私はクラスの女子に呼び出された。