好きな人と親友
午後の授業を早退し、無事帰宅を果たした風花は、真っ直ぐ自室に戻るなり制服も脱がずにベッドへとダイブした。
明良から告げられた告白の言葉を思い出してはゴロゴロと転がりまくったせいで見事に制服が皺だらけになってしまった。
人生初の告白を受けてニヤける顔をふかふかの抱きまくらに押し付け、ジタバタと足を動かす。
まさか明良に告白されるなんておもっても見なかったのだ。
もしバレンタインデーの日に愛美が呼んできてくれと言わなければ、こんな展開になんて絶対ならなかったはずだ。
(そう……愛美ちゃんが明良君を好きだって……言わなければ……)
親友の愛美の好きな人に告白されたのだ。
冷静になったら冷や汗が浮かび始める。
そう数日前に明良に告白した愛美は、一度ふられたけれど、諦めきれないと言っていた。
自分には関係がなかったから愛美の恋の応援をしていたけど。
(わたし……これからどうすればいいの?)
風花は……明良の告白はとっても嬉しいと感じていた、でもずっと前から愛美の恋の相談にのってきたのだ。
愛美の明良への気持ちも、振り向いてほしいからと容姿だけじゃなく、料理や掃除洗濯、裁縫などを頑張っているのも知っている。
(親友……愛美ちゃんの好きな人を好きになるなんて、わたし……どうしたら良いんだろう……)
もし、風花の明良への好きだと言う気持ちが一方通行だったなら、風花は自分の恋心に蓋をした。
だって愛美が大切だから……
(でも、明良君は真剣にわたしの事を好きだと言ってくれた)
これがふざけ半分だったなら風花は笑顔で断っただろう。
でもあんなに真剣に想いを伝えてくれた明良を前にして、どうしても嫌いだと嘘をつくことが出来なかった……
ぐるぐると回るだけで解決策すら浮かばない思考に、髪の毛に両手を突っ込んでグシャグシャにかき回した。
「うがぁー! もう悩むの辞め辞め! 明日愛美ちゃんに全部話そう!」
「姉ちゃんうるせーぞ!」
自室で張り上げた声に被さるように、いつの間にか帰ってきていたらしい空也の怒声が重なった。




