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明良君の事情

「神威君は?」


 因幡が意味深に間を開けるため、風花は唾を飲み込み息を詰めて次の言葉を待つ。


「今は貴女の同級生ですよ」


 にっこりとはぐらかし、笑う因幡に風花の頬が膨れる。


「でも神様、輝夜神様の息子さんなんでしょ?」


「それはーー」


「因幡、勝手に人の事情バラすんじゃねぇ」


 輝夜神に熱烈抱擁されながら喚く神威の姿に因幡と目を合わせて風花はぶっ、と吹き出した。


 それから輝夜神に明良の小さい頃の話や明良の妹が産んだ孫の話を聞きながら一緒に夕食を頂く。

  

 神威の父親は今妹の付き添いで孫の所に行っているらしい。


 あの後不機嫌そうにしながらも因幡と輝夜神の発言を警戒しながら、神威は自分で現在の立場を風花に話してくれた。


 神威は輝夜神と元人間だった父親との間に産まれ、双子の妹がいる事。

 

 妹の結婚に反対して八つ当たりしたせいで、一時的に神様から神力を封印されて人間の身体に封印されてお仕置き中である事。


 地球で沢山の人と触れ合い愛することを学ばなければ封印が解呪されず、神様に戻れないこと。

 

 人間の身体で神気を発動すると身体が力に耐えきれず激痛が走ること。


 社交的に見えて実は人間不信が酷く不意打ちで身体に触られたりすると過呼吸等の拒絶反応が出てしまうらしい。


(イケメンもいろいろ大変だなぁ)


 他人事のように聞いていた風花に輝夜神が爆弾を落とした。


「でも風花ちゃんみたいな彼女がいてくれて良かったわ」


「ぶっ!? ゲホッゲホ、かっ、彼女!? 違います!」


 風花は口に含んでいたお茶を吹き出してしまい盛大にむせこんだ。


(良かった正面に誰もいなくて、いたら大惨事になっていた。)


「風花様大丈夫ですか?」


 因幡が差し出してくれたおしぼりを借りて汚れを拭き取る。


「私はただのクラスメイトで昨日までろくに話すらしたことがなかったんですよ!?」


「えっ、そうなの?」


 否定する風花の勢いに輝夜神はキョトンとしながら神威に確認している。 


「風花はクラスメイトで友人です」


(おいっ、私がいつ神威君の友人になったんだ。)


「まぁ、そうだったのね。 風花ちゃん、母親の私から見ても無愛想でいろいろと不器用な困った息子だけど、これからも仲良くしてあげてね」


 輝夜神にお願いされたものの、神威は女の子にモテモテなので、あまり風花は関わりたくなかった。


 下手に神威と関わると彼に好意を寄せている女子を、敵に回しかねないため、本当に遠慮したかったのだ。


「いやぁ、私なんかよりもっとーー」


「ほら栗きんとんやるよ。 俺たち仲良しだから大丈夫だよ、なぁ風花ちゃん?」


 断ろうとした風花の言葉を遮るように自分の皿から可愛らしい和菓子の栗きんとんを風花の口に放り込み神威は仲良し宣言をくりだした。

 

 しばらくそんな会話をしたあと智輝の姿に戻った因幡と神威では無く人間バージョンは明良と呼ぶように言われて明良は風花を自宅まで送ってくれた。


(はぁ、疲れた。) 


 しかも出迎えてくれた風花の母は、イケメンの明良と智輝に頬を赤らめ惚けている。


 別れの挨拶を済ませて車に戻る明良を他所に智輝は風花の手を掴むと小さく畳んだ紙を握らせた。


「困ったことがあったら連絡して?」


 紙を開くと何やら変わった模様が書いてある。


「智輝さん? これってなに?」


「通信呪」


「ツウシンジュ?」


「そう、神様用の……スマホみたいなものかな?」


(ふぅん……ってこれから厄介事に巻き込まれそうなフラグ要らないよ。まぁ、くれると言うなら通信呪はありがたく貰うけどさ。)


「それじゃぁね」


「えっ!? あっはい……」


 風花の意識が紙に向いている間に車に乗ったらしい智輝は、運転席の窓を開け声をかけてきた。


「風花、また明日な」


 後部座席の窓を開けた明良がのたまった。


「はぁ!?」


(明日ってなに!?)


 反論する暇を与えず智輝は車を、発進させ夜道を消えていった。


「ねぇねぇ風花、明良君と明日も遊ぶの?」


 貰ったばかりの通信呪を折り畳み、スマートフォンに取り付けた手帳型カバーに差し込んでいると、ニヤニヤする幸子に聞かれ睨みつける。


「知るか!」

 


 

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