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第三章 crystal 弐

作者の事情により長らく更新出来なかったことをお詫び申し上げます。

その映像はかつて奏が磁広天尊の元へ言伝を頼まれた時のものだった。彼が磁広と会ったのは、その一回きりだ。


奏が触れたこの水晶は大きさにして直径五センチメートル程度だった。


香蓮が言うには、これは奏の記憶を結晶化させたものであり、小さければ小さい程奏の中では重要人物ではないそうだ。


すなわち、大きければ大きい程その映像の人物は重要だということである。


そしてこの水晶の色も深く関係しているそうだ。


例として蒼色は悲しみ、紅色は怒り、先程の磁広天尊の翠色は尊敬を表している。


(だからあんなに沢山の色があるのか…)


数え切れない程浮かぶ水晶群。自分が生きてきたこの2500年間に出会った数々の人々を思い出し、奏は感慨深くそう思った。


その様子を香蓮は微笑みながら見つめていた。


「付いてきなさい、奏陰」


そう言って、香蓮は奏の手を握った。いきなりの彼女の行為に、奏は身を強ばらせた。


基本的に奥手な彼はかなりの純情少年なのだった。かれこれ2483年間も香蓮に片思いしているのだ。


記憶を封印している間も奏は無意識のうちで香蓮のことを思い続けていたのかもしれない。


そう考えると奏が下界の女に見向きもしなかったのも頷けるというものだ。


天上界一の美女と比較するのは普通の女には少々酷なことだろう。


香蓮の武器の一つにその類い(まれ)なる美貌も含まれていることは天上界中で有名な話だ。


そんな香蓮よりも美しい女は下界にはなかなか存在しないだろう。

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