第三章 crystal 壱
「ここは…?」
奏は今までとは違う空間に居ることを確認し、一緒に居た香蓮が居ないことに気づいた。
彼女を捜そうとしたが、彼はもがくだけで全くその場から動けなかった。
「香蓮様!どこにいらっしゃるのですか!?」
返事は無い。不気味な程の沈黙が続いた。
「香蓮様ぁ!!」
彼は香蓮と離れたくないという、ただそれだけの思いだった。
「騒々しいのぅ…敬語は嫌いだと前々から言っておるであろう」
急に目の前に巨大な水柱が立ったかと思うと、中から香蓮が現れた。今までと違い、柔らかい口調だった。
「香蓮様が…じゃなくて香蓮が居なかったから…それより、此処は何処なんだ?」
香蓮のことばかり気にして、現在地のことなどまるで気にしていなかった奏は彼女に尋ねた。
辺りを見回すとそこはまるで、宇宙空間にいるかのような錯覚に陥ってしまいそうな光景が広がっていた。
その錯覚の原因となっているのは、大小様々な水晶球。
それらはそれぞれが自らを主張しているかのように同じ色は無かった。
奏にはこの空間が何なのか皆目見当がつかなかった。
「ここはお前の心の中だよ、奏陰」
「俺の中…?」
「そうだ。その水晶球に触れてみなさい、面白いものが見れる」
そう言われて、近くにある水晶に奏は手を触れた。すると、水晶球の上にぼうっと映像のようなものが浮かび上がった。
「これは…磁広天尊?」
「その通りだ。そしてその映像は見覚えが有るはずだ」




