第二章 blaze 弐
燈影の結んだ印は、薫の肩口に焼き付いた。太陽を象った紋章である。
「────ッ!?」
あまりの熱さに、薫は声にならない悲鳴を上げた。それもその筈だ。燈影が司っているのは焔なのだから。
肩を押さえ、しゃがみ込む薫。
「熱いだろう?しかし、これ位で記憶も力も取り戻せるなら易いものでは無いか?」
「ふざ…けるな…」
「これで問題児のお前も大人しくなるしな…」
燈影は薫に近付き、見下して言った。その瞳の色はとてつもなく深かった。
目の前にいる男の威圧感に呑まれてしまった薫は、いきなり背を向け走り去ってしまった。
「さて、どれほど保つか見物するとするか」
燈影は、首から提げた小型の角笛を吹いた。
音はしなかったが、彼の横には何時の間にか天馬が現れていた。その天馬に跨り、高みの見物をしようと彼は飛び立った。
「はァッ、はァッ───」
薫の体は異常を来していた。そう、先程印を焼き付けられてからだ。
炎で灼かれたような熱さだが、何故か火傷特有の痛みは無い。
それはまるで、炎が体に巣くっているかのようだ。その炎は薫の体力を蝕んでいた。
体力になら絶対の自信を持っていた彼であったが、今や走れない程に疲弊していた。それに加えて、印の部分の温度は先程よりも上がってきている。
(やべぇ…もう…)
いきなり眩暈に襲われた薫は、その場に崩れ落ちていった。
「予想以上に粘ったな」
上空で見物をしていた燈影は、倒れている薫の横へと降り立った。
そして彼の腕を掴んだかと思うと、天馬の背に軽々と乗せた。
いくら薫が細身とはいえ、軽々と持ち上げることは到底できることでは無い。
しかし、燈影は香蓮と位を同じくする四聖の一人である。彼にとってみれば、重力など無いに等しい。
彼はまた天馬に跨り、薫を運び去った。




