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第二章 blaze 壱

金髪の少年は立ち止まって、肩で荒い息をしていた。


(くっそ…どこまで続いてんだよ!)


そう思うのは当然だ。香蓮と奏の居たところからもう随分走った筈なのに、辺りの風景は全く変わっていない。蓮の香りと薄霧に包まれた、異空間。


「奏…」


自分の親友はどうしてしまったのだろうか。思い出さないのか、と問われても、自分はこんなところの住人などではない、としか薫には言いようがない。


(天上人だって?はん、馬鹿馬鹿しい。奏だって、きっとあの女に騙されているんだ…)


自分の中でそう結論づけ、彼はまた走り出した。


『いつまで走るつもりだ?愚か者』


不意に男の声が聞こえた。そして、彼の目の前はぐにゃりと歪み、水と蓮の空間は消え、闇に包まれた。


「何だ…?」


見回しても何も見えない。薫に見えるものは自分の姿だけだった。


『此処は焔の間だ』


先程と同じ声がしたかと思うと、ぼうっと明るいものが浮かび上がった。よく見ると、灯籠だった。


「どこを見ている?」


後ろからいきなり声をかけられ、薫は驚いて振り向いた。


「誰だっ!?」

「人に名を尋ねるときは自ら名乗るのが、礼儀だろうが!───まぁ、お前の事は全て知っているからな。今回は見逃してやろう」


振り向いたその先には、氷のように冷たい印象の男がいた。


背は薫より少し高いくらいだが、薫よりも筋肉質なようだ。


奏並みに美しいその容貌からは嫌でも威圧感を感じさせられる。


「我がなは燈影。問題児なところは相変わらずだな、薫陽」


(薫陽?オレのことか?)


薫は訳もわからず戸惑っている。


「あぁ、そう言えばお前の記憶と力は、香蓮のとこの優等生の奏陰とは違って、戻って無いんだったな。薫陽はお前の名だ」


薫は段々とイライラしてきて、とうとう堪忍袋の緒が切れた。


「記憶とか力とか…でたらめ言うんじゃねぇ!!」


激昂する薫を見て、燈影は溜め息をついた。


「力ずくで思い出させるしか無いようだな……香蓮のとこのとは大違いだ」


「はぁ!?どういう───」


薫の言葉を遮るように、燈影は印を結んだ。


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