prologue 弐
その後も少し話し込んでいたが、10分ほど経つと彼らは話しながら教室を出た。
廊下を歩いていると、すれ違った人はみな振り向く。
陽気で人懐っこい薫と、無口で美しい奏。ファンクラブがあるほどの人気だ。
何故だか奏のほうが人気があるようだが。
しかし、奏にとってそんなことはどうでもいいことだった。彼は人と話すのが苦手だからだ。
奏は薫以外の人とは滅多に話さない。今日も手を振るクラスメートにすら挨拶せず、少しだけ手を振り返しただけだった。
そしてこれもいつものことだが、下駄箱には手紙がぎっしりと詰まっていた───もちろんラブレターのみ。
その手紙をショルダーバッグにしまうと、靴を取り出した。
彼はもらった手紙は全て読んでいるらしい。全くの人嫌いというわけではないようだ。
このことは薫が一番理解していた。
(優しい奴なんだよな───不器用だけど)
薫は奏を見て思った。
「───どうしたんだ?」
不思議そうな顔をして薫のほうを見ている奏。
「なんでもねぇよ。さ、行くか」
そう薫は言い、二人は玄関を出た。「───霧が出てきた」
奏はポツリと呟いた。先程まで晴れていたのが嘘のようだ。
辛うじて足元は見えているが、その霧は深く、あたりは重く、薄暗い雰囲気に包まれている。
「ったく、どうしたってんだよ…さっきまで晴れてたのに」
不機嫌さを隠そうともせずに言う薫。何故か奏は黙り込んでいる。
「奏、どうかしたのか?」
少し間を置いてカナデは答えた。
「───変な予感がする」
「……」
二人とも黙り込んでしまった。
しばらくそのままでいたが、薫がしびれを切らして口を開いた。
「ここに居たって仕方ねぇ。とにかく、さっさと帰ろうぜ」
「───あぁ」
奏も同意した。二人は帰り道を急いだ。
────が、しかし歩けば歩くほど霧は深くなるばかり。とうとう足元すら見えなくなってしまい、二人は足を止めた。
「───何も見えないな」
「あぁ───でもどうしてお前の姿ははっきり見えるんだ?それに……さっきからずっと真っ直ぐ進んでたんだが……何にもぶつからない」
薫はそこはかとない不気味さを感じていた。
奏は冷静に考えつつ、溜息を漏らした。こういう場合、現状を打破する為には何か行動するしかない、と彼は知っていた。
「取り合えず歩くか。考え込んでも埒が明かない」
「あぁ、仕方ねぇけどな」
奏の提案で、二人はまた歩き始めた。どこに終わりが有るか分からない、深い霧の中を─────




