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嘘だと言ってよ、麗美……




 如月晶子、及び如月タクヤの拉致事件に関しては、色々と手を回した甲斐もあり穏便に収束することができた。

 不破達が撮った写真や動画などに付いては、全て回収し、消去済である。

 念入りに監視網を張り巡らせていたので、拡散も恐らくはされていないだろう。

 少なくとも、データ的なやり取りについてはされていないハズだ。


 因みに、その不破達については、不破を除いて全員解放済である。

 解放前に必要な処置は施しているので、今後俺達に接触することはないだろう。


 ちなみに、必要な処置なんて言うと、洗脳や拷問でもしたのかと思われるかもしれないが、実は大したことはしていない。

 ちょっとした記憶操作で、不破や俺達と出会う前後の記憶を曖昧にしたくらいである。

 本来であれば、ピンポイントでの記憶操作は中々に難易度が高いのだが、1~2日以内の記憶を薄れさせる程度であれば、麗美くらいの魔術師にかかれば容易なことなのだ。

 やってることは、重度の酔っぱらいが先日の記憶をなくすアレ(・・)を故意に引き起こすようなものだからな。


 不破については…、まあデリケートな案件なので少し置いておこう。

 研究所の連中がやる気を出しているので、多分周囲には大きな問題を起こさないハズだ。

 不破自身に対しては知らないがな…



 さて、まあ色々と面倒ごとはあったが、我々『正義部』は念願の新入部員を獲得した。

 それも二人、しかも男で!

 二人とは、もちろん如月シンヤと尾田君のことである。

 尾田君に関しては、実は乗り気ではなかったんだが、これだけ関わったんだから~、と訴えるように誘ったら渋々了承してくれた。

 相変わらず律儀な男である。

 だからこそ、彼のことを気に入っているのだがね。


 ともかく、これで『正義部』の男女比は3:3である。

 これは我が部、というか俺が抱えていた問題を大きく改善し得る数値だ。

 この比率であれば、正義部が『女を囲っている不純な部』だなんて言われることは、もうないだろう。

 これで、俺に向けられる辛辣な噂や態度も緩和されるハズ!!





 ◇





「そんなふうに考えていた時期が、俺にもありました…」



「…おい、いきなり招集をかけて何かと思ったが、一体どうした?」



 俺の愁いを帯びた台詞に、真っ先に反応してくれたのは尾田君である。

 彼は体格の関係で上座というか、お誕生日席のような位置に座っている。

 その雰囲気はいかにも部長といった風であり、いっそのこと彼に部長を任せても良いんじゃ? と俺は思っていたりするのだが、それはまた今度、別途相談することにしよう。



「尾田君…、君なら薄々気づいているんじゃないかな? クラスの雰囲気とかで」



「……そういえば、なんか妙に好奇の視線だったり哀れみの視線を向けられてるような気もするが、それと関係あるのか?」



 まさにそれだよ尾田君。

 実に、実に由々しき事態なのである。

 これは想定していなかった…

 いや、正直想定したくなかった…



「兄者、まさか事件か!?」



「いや、事件と言うか、如月君のそういう所が原因と言うか…。ともかく、俺を兄者と言うのはやめてくれと言っただろう?」



「部室では良いじゃないですか、兄者」



 兄者、という単語を聞くたび、胃がキリキリする。

 この男の、この態度こそが、今俺達に向けられている視線や噂の内容に直接関係していると言っても過言ではないというのに…



「…諸君、現在、我が部にとって大変不本意な噂が流れていることを知っているかね?」



「それは…、良助が私達のご主人様だとか言う?」



 何それ。

 そんなの知らない…。知りたくない…。

 一体、静子はどのように一重に伝えたのだろうか…

 そう思い静子を見ると、本人はキョトンとした顔をしていた。

 代わりに麗美がバチコンバチコンとすっかり上手になったウィンクで応えてくる。

 …一重には上手く伝えるようにと言っておいたが、これはあまり期待しない方が良いかもしれない。



「…一重、恐らく麗美辺りから説明を受けたのかもしれないが、それとは別物だ。主に噂になっている対象が違う」



「対象が違う…? …なあ、神山。俺は少し嫌な予感がしてきたんだが?」



「その予感は恐らく正しいよ、尾田君…」



「兄者! 俺には何のことか分からないぞ! 噂ってなんだ? ご主人様? 説明してくれ兄者!」



 く…、真っ直ぐなのは大変結構だが、煩いぞ如月君! ていうか兄者っていうんじゃねぇ!

 しかし、そうか…、引きこもっていた如月君にとっては、最近まで学園で流れていた噂なんて知っているワケないものな…



「…麗美、説明してやってくれ」



「畏まりました。マスター」



 俺に頼まれたのが嬉しかったのか、活き活きとした表情で引き受ける麗美。



「如月君、実は如月君達二人が入部する前、我々『正義部』にはあらぬ疑いがかけられていました。それは、マスターが私を含む女子三人を囲い、ハーレムを形成しているというものです」



 全く、酷い噂である。

 大体に、普通に考えてそんなことできるワケないじゃないか…

 まあ、この部がたった三人で設立を認められたということ自体には、きな臭い要素を感じなくもないが…

 しかし、それにしたってハーレムはないだろう。

 ティーンでもあるまいし…、あ、そういえば今はティーンだったな…



「まあ実際、本気でそう思ってるのは全体の約三割程度だったと思います。残りの七割は妬みだとか、爆発しろだとか、そういった感情から噂に乗っかっていただけですね」



 俺はそれを聞いて少し戦慄を覚える。

 三割は、本気だったってことか…?

 嘘だ、嘘だと言ってよ…



「それは…。でも、確かにこの部の女性陣は全員美人だしな。以前の俺なら、リア充爆発しろと思っていたかもしれない…」



「あら、美人だなんて如月君、随分お上手になりましたね?」



 静子も一重もやや照れた様子だ。



「いや、女性は素直に褒めた方が良いとお袋がな。兄者を見習うつもりなら、まずはあの女たらしぶりからにしろと」



 晶子さん!? もしかして俺、女たらしだと思われてるの!?



「はは…、まあ動機は不純ですが、正直な気持ちで言っているのなら悪い気はしませんね。さて、これまでの状況については理解して頂けましたね?」



「ああ」



「はい。ではそれを踏まえた上で、現在流れている最新版の噂について説明致します。まあ、特に捻りもないので簡潔に言いますと、マスターのハーレムに、新たにメンバーが二人(・・)追加された、というものになります」



 そう。それだそれ。

 もう、マジで勘弁して欲しい。



「ちょ、待てよ! なんだそりゃ!? 俺達は男だぞ!?」



 ある程度予想はしていた尾田君だったが、どうやらその予想よりも現実は酷いものだったらしい。

 いや、もしかしたら、その噂に自分は含まれていないと思っていたのかもな…

 残念だったね、尾田君!


 まあそれは良いとして、尾田君の疑問についてはもっともな話である。

 俺も同じ疑問持ったさ! でも現実はいつの世も…、たとえ世界が変わったとしても、残酷で非情なものなのさ!



「はい。ですからマスター、尾田君、如月君の三人には、現在ホモ疑惑がかかっています」



 オブラートに一切包まない直接的な回答をありがとう麗美。

 でも、それは正確じゃないな。



 何故なら、俺に限定すればバイ疑惑がかかっているのだからな!!!!!


 …ああ、胃が痛い………




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― 新着の感想 ―
[一言] ええええええええ(゜Д゜;) もう誰を入れてもダメじゃん。 もうこうなったらこっちから他の部活の部員のハーレム疑惑やホモ疑惑を流しちまおうぜ!!
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